新型コロナウィルス感染症が2類から5類に変更
令和5年5月8日より、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の取扱いを2類から5類に変更する旨の決定がなされました。これにより医療機関の対応が変わります。季節型インフルエンザと同じ扱いなので受入患者を限定しない医療体制が求められます。併せて臨時的診療報酬の内容も変わりますので事務連絡の内容を注目してください。すでに院内トリアージ実施料の二類感染症入院診療加算の算定は3月31日で終了しました。事務連絡は(その81)まで通知されています。
院内トリアージ実施料は2通りになります。
・「受入患者を限定しない外来対応医療機関」でその旨を公表している医療機関は300点を算定
*現在受入患者を限定している医療機関で令和5年8月末まで受入患者を限定しない体制に
移行する医療機関も算定可能。
・「受入患者を限定しない外来対応医療機関」でその旨を公表していない許可病床数100床未満の
医療機関は147点を算定。
上記点数は再診料算定時と地域包括診療料、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料等初再診料が包括される場合も算定できます。
令和5年3月31日事務連絡を確認してください。
適時調査実施が加速か
コロナ感染症の蔓延で中断されていた適時調査が、多くの地域で昨年末より再開されています。私が点検で訪問している病院にも連絡があったそうです。ある病院は実施に備えて院内点検を開始しています。その一環で資料の点検や当日の質疑内容とそれに回答すべき内容など支援させていただきました。5類感染症に移行することで適時調査の実施頻度が加速するのではないかと考えています。通知が来てからでは対応が難しくなるので事前準備に着手しましょう。
私は今まで適時調査と個別指導を合わせ150回以上支援してきました。適時調査を経験した職員がいない医療機関が多くありますので、ご心配なところはぜひご相談ください。
2023年4月実績報告
レセプト点検件数 600件
延点検時間 47時間
移動距離合計 1,240㎞
移動時間合計 21時間
レセプト点検・施設基準点検に訪問した医療機関
1都3県 7病院 5日
*東京都2病院、埼玉県3病院、茨城県1病院、愛知県1病院。
*2020年12月から28か月連続していた神戸訪問が途切れました。
その他の業務
*施設基準支援 1回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、
武蔵野線、東武東上線、都営大江戸線、東横線、山手線、東海道新幹線、東海道本線、常磐線、
上野東京ライン、名鉄名古屋本線、東急新横浜線。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、北朝霞、秋津、新秋津、小平、田無、
菊名、刈谷、豊橋、新横浜、相鉄・東急新横浜駅(新しい路線の駅。初利用)、上野、石岡。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
【コメダ珈琲店監修、シロノワールクランチ】
名古屋土産。おいしいですよ。
指摘3選
1.皮膚・皮下腫瘍摘出術を全身麻酔下で実施したときの算定注意
皮膚・皮下腫瘍摘出術(露出部以外)長径3㎝以上6㎝未満3,230点を
算定しています。腫瘍の大きさの記載はありますか?
皮膚は表面から順に、表皮・真皮・皮下組織・筋膜・筋とつながっています。
皮膚・皮下腫瘍は表皮から皮下組織にできた腫瘍です。
表皮から皮下組織の厚みは部位により異なりますが4~9㎜とされています。
摘出術の多くは局所麻酔で行われます。
深い位置に腫瘍があるので皮膚・皮下腫瘍より摘出に時間がかかり、
全身麻酔下で摘出することが多くあります。
その場合K030四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術に該当します。
検体は何か書いてありますか。
あ、軟部と書いてあります。
ということは四肢・躯幹腫瘍摘出術が算定できますね。
皮膚・皮下腫瘍摘出術は3,230点ですが四肢・躯幹腫瘍摘出術の背部は躯幹ですよね。
7,390点!ずいぶん点数が違いますね。
2倍以上ですね。
今まで算定したことがありませんでした。
全身麻酔で皮膚・皮下腫瘍摘出術を算定したことがあったので間違っていたんですね。
軟部腫瘍と診断名があれば算定につながりますが、
皮膚腫瘍や○○腫瘍では算定に直結しないので、
麻酔の種類や病理の検体を確認するといいでしょうね。
内臓、皮膚、骨は含みません。
軟部腫瘍の好発部位は肩、背中、大腿、下腿などです。
そのため手術名が「四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術」になっています。
多くは良性ですが悪性に軟部肉腫があります。
その場合K031四肢・躯幹軟部悪性腫瘍摘出術に該当します。
2.周術期のインスリン頻回投与時は全身麻酔困難患者を意識
コーディングデータを見ると周術期にインスリン皮下注を頻回に投与しています。
術前血糖値を確認してください。基準値を満たせば全身麻酔困難患者に該当します。
入院時併存症にⅡ型糖尿病があります。
手術日の朝は162です。
算定もれです。
急性心筋梗塞(ウ)やDIC(チ)など傷病名から、人工呼吸(ヌ)や透析実施(ネ)など治療からわかりやすいものがありますが、空腹時血糖(シ)や1秒率と肺活量比(コ)など実際の検査数値を確認しないとわからないものがあります。
どうすれば算定につなげることできるでしょうか。
多くの医療機関は術前検査でスパイログラフィー、UCGを実施していると思います。
(コ)の喚起障害はスパイログラフィー検査で得られた1秒率70%未満と
肺活量比70%未満の両方があれば算定要件を満たします。
1秒率はフローボリュームカーブ、肺活量比は排気量分画でわかります。
UCGは何に該当しますか。
UCG検査を実施すると「心臓弁膜症疑い」と病名が付きますね。特に外来の場合。
その通りでUCGは心臓の弁の動きを知ることができます。
結果はカラードップラーで赤と青で表示されますがそれにより
僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁閉鎖不全症、三尖弁閉鎖不全症を診断する尺度になります。
軽度、中等度、重度に分類され中等度と重度は全身麻酔困難患者要件の(エ)に該当します。
医師に確認すればいいんですね
そうですね。そもそもUCG検査は全身麻酔前に患者さんの心機能評価として行っているので
算定につながる事例があると思います。
入院時検査、手術前検査と算定項目
・Hbs抗原、HCV抗体 :ウイルス疾患指導料、手術料通則11手術料感染症加算
・スパイログラフィー :全身麻酔困難患者(コ)喚起障害
・末梢血液一般検査 :全身麻酔困難患者(ソ)貧血
・血液ガス分析 :全身麻酔困難患者(ケ)呼吸不全
・心臓超音波検査 :全身麻酔困難患者(エ)中等度以上の弁膜症
(大動脈弁、僧帽弁、三尖弁、)
3. DPC 「症候性てんかん」症候の原因は何ですか
症候性てんかん010230にコーディングしています。
緊急搬送入院なので救急医療管理加算2を算定し、コメントに「ガードレールに衝突し受傷」とあります。入院日に前頭部挫創(S01.0)の診断があり創傷処理を行っていますね。
救急医療管理加算は(ク)の「外傷で重篤な状態」にしています。
「前頭部外傷」になっていました。
搬送通知からも外傷の治療で搬送されたことがわかります。
医療資源はどうでしょうか。出来高のレセプトイメージを見てください。
点数が高い診区はどれですか。
50番の手術料です。
注射料はどれくらいですか。
コーディングデータを見ると注射の内容は10日間入院し抗生剤投与が7日間、
抗てんかん薬は2日間だけですね。
そうです。入院日にナートしそれから7日間抗生剤が投与されています。
抗てんかん薬は入院翌日から3日間だけです。
受診は夜間なので手術料950点+デブリードマン加算100点×1.8で手技料が1,890点、
他に局所麻酔と生理食塩液100mlと合わせ1,910点です。
点滴は抗生剤ピギーが1日2回を7日で819点、抗てんかん薬は3日間で438点。
医療資源を比較するとき補液は案分できないので計算に入れなくてもいいです。
こうしてみると医療資源最多病名は「前頭部外傷」になります。
そうですね。症候性てんかんがあったのでコーディングを決定していました。
てんかんは重症だと認識していたので。
もちろんてんかんは重症疾患ですが、症候性がつくと何かの理由でてんかんを発症した、
と考えることができるので原因疾患へのコーディングも検討するといいですね。
この事例は前頭部外傷160100でその他の手術ありに副傷病にてんかんがあるので
160100樹形図番号⑥にするのが適正だと思います。
てんかん大発作と症候性てんかんは同じてんかんでもコーディングに注意ですね。
疾患の機序を勉強しないといけませんね。
最後までお読みいただきありがとうございます。次回は6月3日を目標に頑張ります。