もう1か月経ちました
月日が経つのはあっという間ですね。1月はレセプト提出まで平日が少ないので休日出勤をされた方が多いと思います。毎年のことながらお疲れ様です。私の仕事始めは4日でした。茨城の医療機関で電子カルテの記載と請求内容(外来分)が合っているか、傷病名は適切かなどオーディットのような内容です。月末にレセプト点検を行った医療機関では、入院患者さんの電子カルテをみながら算定誤りがないかなど確認しました。カルテには多くの情報があります。患者さんの症状、医師の所見や診断根拠、
看護計画、関係する従事者の関わりなどが凝縮されています。
私はカルテをみるときに算定誤りや算定もれを確認するのはもちろんですが、算定要件を満たす記載があるかという点も重要視しています。レセプトを作成するときは算定項目を入力することに終始しますが、本来要件を確認し算定することが必要です。代表的なものは医学管理料です。その中でも200床未満の医療機関やクリニックで算定する「特定疾患療養管理料」がポイントの一つです。対象疾患で通院する患者さんが多く、月2回算定できることから算定件数が多くなりますが、個別指導を受ける際に必ずと言っていいほど「記載がない」「個別性がない」と指摘され、最悪の場合返還金が発生します。記載は長文である必要はなく医師が指導内容を思い出せる程度でよいとされています。
*今回見つかった事例の一部で左が算定項目です。
・局所麻酔 → 仙骨硬膜外麻酔を実施
・血液ガス分析、動脈血採取 → 静脈血で実施
・大動脈狭窄症Q25.3にコーディング → 医師の診断は大動脈閉塞症I74.3
(注)Qコードは先天性疾患です。
オーダリングシステムを採用している医療機関はオーダーの入力がないと算定につながらないこともあります。紙カルテでは処置伝票などに記載がない場合も同様です。医療側と算定担当者がオーダーの
もれや算定もれを意識し、連絡を取り合いロスのない算定を心掛ける必要があるでしょう。
オーディットしてみましょう
ぜひカルテの記載を確認してください。全件できなくても深夜帯の受診分や緊急入院のカルテをみるだけで算定もれの発見や治療内容を知ることができスキルアップにつながります。重要なのは患者さんの主訴(S)と医師所見(O)です。これらの記載から医療行為につながっていくので、内容を理解した上で読み進めていくと医師の指示理由がわかり、実施の確認ができるようになります。オーダーや実施記録があれば単に入力するだけでなく知識に基づいた算定につながっていきます。挑戦しましょう。
2023年1月実績報告
レセプト点検件数 934件
延点検時間 65時間
移動距離合計 3,449㎞
移動時間合計 33時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都3県 9病院 8日
*東京都2病院、埼玉県4病院、兵庫県2病院、茨城県1病院。
その他の業務
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、
武蔵野線、東武東上線、都営大江戸線、東横線、横浜線、山手線、東海道新幹線、山陽新幹線、
上野東京ライン、神戸市営地下鉄海岸線、神戸市営地下鉄西神・山手線、東京モノレール、
スカイマーク、ポートライナー。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、小平、田無、高田馬場、菊名、鴨居、
品川、新神戸、神戸地下鉄三宮、みなとじま、医療センター、旧居留地・大丸前、御崎公園、
神戸新交通三宮、神戸空港駅、神戸空港、羽田空港、羽田空港第1ターミナル、大門、浜松町、
上野、石岡。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
ピーナッツ
ハマっています。きっかけはローソンの「粒もちピーナッツ」です。店舗によりいろいろな種類が
あるようです。スーパーのライフなら「つぶあられピー」ですね。辛いですがチョコレートと一緒に
食べるとよりおいしくなります。お試しあれ。
指摘3選
1.結腸半側切除 癌が播種したときの算定は?
傷病名が「腹膜癌」「腹膜癌横行結腸浸潤」で、
子宮附属器悪性腫瘍術と結腸半側切除術の算定があります。
前者がK889で58,500点(主の手術)、
後者はK7192 14,970点(従の手術)を算定しています。
手術記録にその2種類の手術が記載されていました。
結腸浸潤は癌細胞が播種したということなので結腸癌です。
ですからK7193結腸悪性腫瘍手術に該当し39,960点×50/100
19,980点が算定できます。
半側切除の場合でも算定できますか。
K719の点数は「1小範囲切除、2半側切除、3全切除、亜全切除又は悪性腫瘍手術」ですね。
これは下線の手術は良性疾患に対する手術で、悪性腫瘍に対する場合は3悪性腫瘍手術に該当し、切除部分の大きさで算定するのではないということになります。
悪性腫瘍手術は全摘か亜全摘のときに算定すると思っていました。
4として「悪性腫瘍手術」とあればわかりやすいのですが、日本語の解釈としてややこしい記載ですね。半側切除と言っても癌の部分を切除するのでリンパ節郭清も行い時間がかかると思います。
全切除や亜全切除はどんな時に行われますか。
潰瘍性大腸炎で行われることがあると思います。
潰瘍性大腸炎の内視鏡画像は「鉛管性腸管」と言って潰瘍部分が途切れなく続きます。
似ている疾患にクローン病がありますがこちらは「敷石状腸管」と言われ潰瘍が飛び飛びに存在します。そのため潰瘍性大腸炎で腸管を切除するとき範囲が広くなるんですね。
それともう一つ、浸潤と播種について教えてください。
どちらも癌転移のことです。癌の転移には「血行性、リンパ行性、播種」の3種類があります。
浸潤は原発巣の癌細胞が直接周囲の組織や臓器に広がっていくことで、その結果転移の3種類になります。
播種は「胸膜播種」や「腹膜播種」など傷病名で見ることはありますが、
血行性やリンパ行性はあまり出てきませんね。
そうですね。例えば転移性肝癌と診断したときにカルテには血行性やリンパ行性などの
記載があるかもしれませんが、傷病名には記載されないでしょうね。
転移性の表現に含まれる概念だからです。
ちなみに肝臓の栄養血管に大腸とつながっている門脈があるので、大腸癌の肝転移が多いと思います。傷病名も単なる肝癌でなく転移性肝癌(C78.7)、原発性肝癌(C20.0、肝細胞癌(C20.0)がいいでしょうね。
そうします。
腹膜癌は希少癌の一つです。
国立研究開発法人 国立がん研究センター 希少がんセンターのサイトに詳細な記載があり
参考にしました。
2.ルンバ―ルは検査でなく検体採取料や処置料です
くも膜下出血の患者さんに腰椎穿刺を算定しています。
目的は何ですか?
オーダーがあったので算定しました。
目的は大きく3つあると思います。
検査、排液、薬剤注入です。
この場合はどれに該当しますか?
何を見ればわかるでしょうか。
算定日に髄液検査を実施していませんか。
検査結果を見ます。
リコールとあり細胞数やノンネアペルトに数字の記載があります。
それは髄液一般検査です。
検査料を算定することできます。
もちろん検体検査判断料も算定できます。
検査目的だったのですね。
くも膜下出血や髄膜炎の時に行う検査です。
ルンバ―ルは腰椎穿刺のことですが髄液検査の実施という意味でも使われるので、
あたかもルンバ―ルが目的のような気がしますが、この場合はあくまで検体採取料です。
血液検査時の静脈血採取と同じです。
排液や薬剤注入はどんな時に行いますか。
排液はタップテストのように脳脊髄液を排液することで症状の軽減を見る場合に行います。
この場合はJ007腰椎穿刺317点を算定します。薬剤注入は抗癌剤を注入することがあります。手技料はG009脳脊髄腔注射140点がありますが、その都度穿刺を行うときはJ007腰椎穿刺317点になります。J007には薬剤注入が含まれます。
ルンバ―ルと聞いたら目的を確認し正しく算定します。
局所麻酔や消毒薬も忘れないでください。
スパイナルドレーンを留置すれば手術になるので
K189脊髄ドレーン術が算定できます。
3. DPC アナフィラキシー 症状の一つは蕁麻疹
161060アナフィラキシーのコーディングですね。
蕁麻疹の診断もありポララミン注を点滴しています。
酸素吸入は未実施です。血圧はどうですか。
はい、血圧120/80でバイタルは特に異常がないようです。
アナフィラキシーには重症度がありグレード1(軽症)、グレード2(中等症)、グレード3(重症)になります。
重症度は以前心不全NYHA分類を教えてもらいました。
ネット情報をまとめると次のようになります。
皮膚症状
グレード1:部分的蕁麻疹、自制内。グレード2は全身蕁麻疹、自制外。グレード3には該当項目がありません。
喘鳴・呼吸困難
グレード1は該当なし。グレード2は聴診上の喘鳴と軽い息苦しさ。グレード3は明らかな喘鳴、呼吸困難、チアノーゼ、呼吸停止。
以上からグレードにより症状や治療がかなり異なっているようです。
この事例のグレードはいくつくらいでしょうね。
ポララミン注の適応は蕁麻疹だと思うので2に該当し、
酸素吸入未実施から2が妥当でしょうね。
そうですね。それなら蕁麻疹にコーディングしてもいいでしょうね。
入院が2日なのでアナフィラキシー5,150点が
080080蕁麻疹5,740点になり590点増点になりました。
アナフィラキシーは重度化する可能性がありますが今回は軽症だったのでしょう。
アナフィラキシーと聞くとそれ以外のコーディングを考えれれない時がありますが、
治療内容から判断し医師と相談してください。
ショックの5徴候(ショックの5P)
アナフィラキシーショックや敗血症性ショックなど
ショック症状になると重症度が増します。
ショック症状をショックの5徴候と言います。
Pから始まるのでショックの5Pとも言います。
・蒼白(pallor)
・虚脱(prostration)
・冷汗(perspiration)
・呼吸不全(pulmonary insufficiency)
・脈拍触知不能(pulselessness)
救急医療管理加算1のコメントや敗血症のコーディングの症状詳記に使えます。
(例)救急医療管理加算1 急性膵炎による顔面蒼白、全身虚脱、呼吸不全あり
(例)急性腎盂腎炎から敗血症を発症した。高度の呼吸不全あり人工呼吸実施。
収縮期血圧80と低下しショック症状を呈する。
*血圧が低下すると脈拍触知不能になります。
最後までお読みいただきありがとうございます。次回は2月28日を目標に頑張ります。
今回は記載が遅れました。1月29日から2月3日まで巡礼が続いたので時間が取れませんでした。月末と月初にサイトの閲覧数が増えるのは記事の掲載を待っていらっしゃる方々がいるからだと想像しています。読んでいただくことが記事を書く推進力になっています。