算定に役立つ傷病名の知識  病名整理と転帰

傷病名と算定

傷病名との遭遇 

未知との遭遇という映画がだいぶ昔にありました。レセプト点検すると多くの傷病名に遭遇します。レセプト1枚につき傷病名はどれくらいあるでしょうか。理論的には制限なしに記載できますが、脈絡のない病名があまりにも多いと点検モチベーションがかなり下がります。あれの疑い、これの疑い、低○○血症、○○欠乏症などなど、先生は患者さんにこれだけの病名を告知しているのか?たびたび疑問に思います。

DPC算定ならコーディング病名と入院契機病名、入院時併存症4つ、入院後発症病名4つくらいでいいですが、出来高、特に慢性期の長期入院の場合、驚くばかりの病名がついています。30いや40。それなのに食事回数が「実日数×3回」さらに特食が30日。審査機関の方々も面食らうでしょう。

実例!入院レセプト返戻! 理由を見ると「傷病名が多すぎる」。こんなこともありました。傷病名は整理整頓しましょう。言うは易し。病名がないと査定される、つけるのは必然。=レセプト病名の誕生です。
その傷病名は診療録に記載されていますか?つい質問します。

傷病名が多くなる原因の考察
 1.必要のない傷病名がある
 2.似たような傷病名がある
 3.治癒したと思われる傷病名がある

1の症例 必要のない傷病名がある
傷病名:本態性高血圧症 降圧剤服用中の患者さん
検査:心電図、末梢血液一般検査、生化学検査(ALT、ASTなど)、胸部単純1枚

レセプト傷病名欄
(1)本態性高血圧症
(2)不整脈疑い
(3)貧血疑い
(4)肝機能障害疑い
(5)胸水疑い
*このようになっていませんか!
↓ 変更
(1)本態性高血圧症
レセプト適応欄 「心電図、末梢血液一般検査、生化学検査」「胸部単純1枚」の下に
「降圧剤服用中のスクリーニング検査。特に問題なく服薬継続」
*降圧剤の効能・効果を調べると【副作用等】に次の注意事項が記載されています。
(抜粋)腎機能障害、AST上昇、ALT上昇、肝機能障害、胸部X線異常。
これらの検査を行い経過観察しながら投与を続ける必要があるということです。

2の症例 似たような傷病名がある
レセプト傷病名欄
(1)肝硬変症      [ICD]K74.6
(2)慢性B型肝炎         B18.1
(3)肝性脳症           K72.9
(4)高アンモニア血症       E72.2
(5)意識障害           R40.2
*(1)~(4)は全て肝臓疾患です。
発症の機序は、慢性B型肝炎⇒重度化⇒肝硬変症に移行⇒アンモニア値上昇⇒肝性脳症の症状出現。
(5)はRコードからわかるように症状です。原因は肝性脳症でしょう。
↓変更
(1)B型肝硬変   B18.1†、K74.6*
2)肝性脳症   

3の症例 治癒したと思われる傷病名がある
レセプト傷病名欄 令和3年6月分
(1)一過性脳虚血発作  令和3年4月1日
*一過性脳虚血発作(TIA)の定義は「24時間以内に症状が改善する」です。
ただ、日本脳卒中学会は2009年発行の「脳卒中治療ガイドライン」で
「TIAが疑われた場合にはただちに予防的治療を開始すること」を推奨しています。
またTIAの10-15%が3カ月以内に脳梗塞になり、その半数は2日以内に発症していることが
データで示されたそうです。
↓変更
(1)一過性脳虚血発作  令和3年4月1日(治癒)
又は
(1)
一過性脳虚血発作 令和3年4月1日(治癒)
(2)脳梗塞      令和3年4月3日
 


目標:傷病名に転帰を入れる
傷病名は整理しないと増えるばかりなので、常に意識することが重要です。不要なものは付けず、治療が終了したものには転帰を入れることで、審査側にいい印象を与えることができます。傷病名の代わりにレセプト摘要欄にコメントを記載するのも一つの方法です。
不要な傷病名は医師と連携しながら減らしましょう。

レセプトさとう合同会社
佐藤達哉