8月はいろいろありました
口腔外科に入院し炎症を起こした歯茎を切開排膿していただきドレーンを留置してもらいました。歯茎にもドレーン法があると少しばかり驚きです。中旬は富士登山に行きました。9回目の挑戦でしたが、8合目を超えたところで大雨と疲労のため登頂を断念。登頂できなかったのは今回が初めてなので、少し落ち込みながら下山しました。河口湖に一泊し翌朝帰京、少し休んで次の巡礼地の名古屋に移動し、翌日8時30分から15時過ぎまでレセプト点検。終了後神戸に移動。東京に戻り茨城の病院の点検。1日休んで神戸に3日滞在。かなりハードでした。東京に戻ってのどに違和感があり次の朝には水を飲むのも一苦労なほど喉が腫れていました。1日半食事ができず体重が2㎏落ちてしまいました。現在は食事ができるようになり軽快しました。体力の回復中です。
これを症状詳記に例えると長文なので内容が決してわかりやすいとは言えないですね。次のように変えるとどうでしょうか。
8月2日 口腔外科入院、CRP9.9↑。全身状態悪化直前と告げられる。
歯茎切開排膿、ドレーン留置。ピシリバクタ1.5g1日4回点滴開始。
8月3日 ピシリバクタ1.5g1日4回継続。
8月4日 早朝採血CRP4.4↓。ドレーン抜去後11時退院。午後からレセプト点検。
8月21日 富士登山、大雨と体調不良で8合目で登頂断念。退院後2週間で調整不足(反省)。
8月22日 河口湖のホテルに宿泊し11時帰宅。 15時翌日レセプト点検のため名古屋に移動
8月23日 8時30分~15時30分 レセプト点検。終了後神戸市に移動。
8月24日 9時~17時 レセプト点検、勉強会実施。22時帰京。
8月26日 茨城の医療機関で9時~16時レセプト点検。
8月28日 神戸市に移動
8月29日、30日 レセプト点検、講評。終了後帰京。到着22時。
8月31日 朝、咽頭痛出現、BT36.8(舌下)、P=72。食事摂取困難。BW79.1㎏
9月1日 1日ひたすら臥床(ベッド上安静)、水分補給、ゼリーのみ摂取。
9月2日 BT36.9(舌下)。P=82。BW66.8㎏、2㎏減量。昼より食事摂取可能(流動食)、
夕食より常食開始。
9月3日 BT36.8(舌下)、P=86、BW67.2㎏。回復傾向、グログ作成。
9月4日 BT36.8(舌下)、36.0(腋窩)、P=71、BW67.2㎏。食欲あり。軽快。
9月5日 BT36.3(舌下)、35.3(腋窩)、P=68、BW67.0㎏。筋肉量、基礎代謝大幅減少。
*普段から体温は低めですがあまりにも低い。体温は次の順に高いようです。
直腸>耳(鼓膜温)>舌下>腋窩
症状詳記は時系列の記載が有効です。
総括するとハードスケジュールのため過労が原因だと思います。30日の朝と夕に小雨があり、
傘を持っていたのにささなかったことも原因と考えられます。
教訓:小雨でも折り畳み傘は面倒がらずに使う。
室料差額申込書
入院したときに個室が空いていたので希望しました。入室が8月2日で申込書記載が翌3日でした。すでに入室日の記載があり説明を受けた看護師から「今日の日付けと署名をお願いします」と言われたのですが、普段から懇意にしている病院だったので「入室日の日付にしないと個室料の課金は今日からになるんですよ」と説明し8月2日と記載しました。これは適時調査の点検項目の一つです。
室料差額の課金開始は申込書に署名した日になります。適時調査の時は室料申込書は必ず確認されます。以前私が作成した申込書を添付しますのでご参照ください。年号が平成です。
記載のポイントはいくつかあります。
・「同意書」でなく「申込書」です。同意書は医療機関が決めた病室に同意することで、心からの同意
かしぶしぶ同意なのか判断できませんが、申込書なら患者さんの自由意思となります。
・特別療養環境室という表現です。単なる個室ではありません。そのためロッカーや小机の設置。部屋
の広さが一覧表に明記されていると選択しやすくなります。賃貸物件を探すときのイメージです。
・支払い側はホテル式の〇泊〇日をイメージしますが、医療の場合0時~24時の使用を1日とします。
支払時のトラブル防止からその説明は重要です。可視化すると理解しやすくなります。
・【重要】課金開始は申込日からになります。入室初日に患者さんや家族の方に特別療養環境室への
入室希望を口頭で得た場合で翌日記載する場合、申込日を入室日にしていただく必要があります。
入室日に書類を記載できない状態もありますので。
レムデシビル注(ベクルリー点滴静注用100mg)投与時のDPCコーディング
ベクルリー点滴静注用100mg1瓶は63,342円と高額です。適応は「SARS-CoV-2による感染症」と新型コロナウィルス感染症治療薬です。用法・用量は「初日に2瓶投与し、翌日から1瓶を投与し総投与期間は10日までとする」と定められています。この通りに投与すると薬剤料は696,762円になります。加えて点滴手技料やIVH手技料、補液、ビタミン剤、酸素吸入、人工呼吸、諸検査を相当数行うので医療資源はCOVID-19になり出来高算定になることが多いでしょう。
入院契機が誤嚥性肺炎、他の感染症、うっ血性心不全で入院後にSARS-CoV-2陽性となりベクルリー点滴静注が開始されたレセプトを何件か点検しましたが、入院契機病名にコーディングされていたものが多くありました。ベクルリー注の投与が終了しても治療は新型コロナウィルス感染症になるでしょう。コーディングに注意しましょう。
2022年8月実績報告
レセプト点検件数 2,130 件
延点検時間 82時間
移動距離合計 3,860㎞
移動時間合計 42時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都5県 10病院 11日間
*東京都2病院、埼玉県3病院、神奈川県1病院、兵庫県2病院、茨城県1病院、愛知県1病院。
その他の業務
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、
都営大江戸線、東武東上線、東横線、山手線、東海道新幹線、山陽新幹線、上野東京ライン、
神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、横浜線、ポートライナー、地下鉄丸ノ内線
名古屋地下鉄桜通線、東京モノレール、スカイマーク。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、北朝霞、新秋津、秋津、菊名、鴨居、
田無、品川、戸塚、新神戸、地下鉄三宮、三宮・花時計前、御崎公園、ポートライナー三宮、
みなとじま、医療センター、神戸空港駅、神戸空港、大門、浜松町、羽田空港第1ターミナル、
羽田空港、名古屋、国際センター、桜山、久屋大通、上野、石岡、淡路町。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
三宮地下にある「丸亀製麺さんプラザ」の冷たい釜揚げうどんと天ぷらトッピング(サツマイモ、
半熟卵天)。チェーン店は安心の味。
指摘3選
1.手術料の基本は創傷処理・デブリードマン加算を忘れずに
第1趾化膿性骨髄炎に対し創傷処理を行い、生理食塩液500mlを使用しドレーンを留置しています。デブリードマン加算が算定できませんか。
デブリードマン加算は屋外で受傷したときに算定すると理解していますが?
そういうわけではなく算定要件は「汚染された挫創に対して行われるブラッシング又は汚染組織の切除等であって、通常麻酔下で行われる程度のものを行った場合に限り算定する」とあります。「化膿性骨髄炎」なので患部の壊死組織を切除し洗浄しているのではないかと思います。
電子カルテを確認してみます。
切開排膿、壊死組織切除後洗浄と記載があるので算定できそうですね。
汚染創は屋外で受傷したときはもちろんですが、室内で受傷し膿瘍ができると皮膚切開術だけでは対応できず、壊死組織を除去することもあります。またこの症例のように骨髄炎、難治性皮膚潰瘍、感染性褥瘡などで実施することが多いですね。
そうなんですね
とにかく創傷処理実施時に生理食塩液や注射用水などの使用があれば、
傷病名と合わせデブリードマンの実施を確認してください。
通常ナートするときは生理食塩液を500ml使用することはないと思いますので。
創傷処理の算定は外来入院とも件数が多いので確認して算定します。
化膿性骨髄炎で腐骨が発生したときに摘出したときはK050腐骨摘出術を算定します。
腐った骨を摘出するんですね。局麻で出来ますか?
局所麻酔で行うこともあるでしょうね。
デブリードマン加算で他に注意すべきことはありますか。
デブリードマンの方法にはいくつかあります。
洗浄以外にドレッシング剤やガーゼで膿を吸い出す方法があります。
100点算定できるので入力の都度確認するようにします。
真皮縫合は算定していますか。
あまりオーダーがないのですが、どんな傷に対し実施するのでしょうか。
真皮縫合のメリットは縫合の跡が残らない目立ちにくいというものなので、
顔面や前腕などの創傷に対して行うことが多いでしょうね。
顔面挫創などでしょうか。
実施したときに正しくオーダーがされるように打合せしてください。
通常のナートより時間がかかり、露出部に対して行うので神経も使います。
医師の働きを点数にするのが医事課の仕事なので頑張ります。
2.同一手術野でもアクセスが異なる手術はそれぞれ100/100を算定。大きな差が出ます。
同一手術野なのでどちらか一方だと思って…
「通常行う手術の到達方法又は皮切及び手術部位が異なる場合」とあります。
皮切と手術部位が異なる場合はわかりますね。
別皮切は2か所以上メスを入れたときはそれぞれ算定。
部位が異なれば同一手術野にならない。ですか?
そうですね。では「手術の到達方法」とは
うーん?教えてください。
このレセプトのように一つは切開下で後方椎体固定術を行い、もう一つは切開せず経皮的な穿刺術なのでこのような時にアクセスが異なると考えます。そうするとそれぞれ手術料を算定できるとなります。
経皮的椎体形成術19,960点を算定できるということですね。
そうなりますね。
胸腰椎圧迫骨折という傷病名から骨折部位が離れているので片方は切開を入れ、
片方は傷口が少ない経皮的を選択したのだと思います。
通則14は主と従の手術の表を見るくらいであまり読み込んでいませんでした。
とても重要なことが書いてあるので医事課で勉強してください。
特に初めて外科系を担当するときや、外来係から入院係になったときは読んだ方がいいですね。
そうします。手術料の算定誤りは点数が大きいので注意するようにいつも言われています。
長文でも繰り返して読めばわかってきますよ。
コツは長い( )書きにマーカーを引くなど読みやすい工夫をすることです。
やってみます
3.DPC 下肢糖尿病性壊疽10007×xxxxx0xx その他透析 → 重症虚血肢050170xx9721xx 四肢切断術、その他透析
併存症に下肢動脈閉塞症があります。
慢性維持透析も行っています。透析歴は長いんでしょうか。
診療開始日から当院の透析歴は10年くらいあります。
今回は予定入院ですね。外来や入院後どんな治療を行っていましたか。
週3回慢性維持透析の実施と透析時にアルプロスタジル注を使用していました。
下肢潰瘍があるのでプロスタンディン軟膏の処方と透析時にフットケアを行っていたようです。
糖尿病性末梢神経障害と下肢動脈硬化症から切断せざるを得なかったのでしょうね。
糖尿病性壊疽になると足の小さな傷から感染しやすくなるのですが、
神経障害で知覚鈍麻だと患者さんは痛みを感じないということなので、
下肢末梢の観察や足浴が重要なんですね。
コーディングは糖尿病性壊疽が適正でしょうか。
傷病名や治療から重症虚血肢の状態ではないかと思います。
カルテにフォンテイン分類の記載はありませんか。
お待ちください。
形成外科にコンサルしていますので見てみます。
ありました。フォンテインⅣ度とあります。
Ⅳ度は虚血性潰瘍や壊死の状態ですね。
Ⅲ度とⅣ度は重症虚血肢と言われるものです。
医師と相談してください。
入院25日の比較で糖尿病性壊死は62,184点。
重症虚血肢は68,787点と点数差があります。
医師に確認します
フォンテイン分類
下肢閉塞性動脈硬化症や末梢動脈疾患の重症度を表す分類。
Fontaine分類 | 症状 | 治療 |
Ⅰ | 無症状(冷感、シビレ) | 動脈硬化の管理、 フットケア、 |
Ⅱa | 軽度 間歇的跛行 | 運動療法、経口薬 |
Ⅱb | 中度~重度 間歇的跛行 | 血管内手術 |
Ⅲ | 安静時疼痛 | 血管内手術、血行再建術 |
Ⅳ | 虚血性潰瘍、壊疽 | 上記+創部処置 |
Ⅲ、Ⅳ=重症虚血肢
最後までお読みいただきありがとうございます。
9月も健康で巡礼できるように頑張ります。訪問先の皆様との交流が元気の源です。
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宮城県出身として仙台育英学園高校の優勝をうれしく思います。須江監督のスピーチに感動しました。病院も医事課も密ですが感染予防を徹底しこの危機を乗り切りましょう。長く続いていますが必ず終わりは来ます。
では、次回をお楽しみに。9月末日を予定しています。