新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その79)
令和4年 10 月 26 日に事務連絡が通達されました。内容は次の通りです。
「令和4年 10 月 31 日までの間算定できることとされている二類感染症患者入院診療加算
(250 点)は令和5年2月 28 日までの間は、引き続き、当該加算を算定することができる。」
上記に該当する医療機関は都道府県の「診療・検査医療機関リスト」に掲載されている医療機関です。私が定期的に点検させていただいている医療機関は、すべてリストに掲載されていましたので引き続き算定ができます。
リストに掲載されていない医療機関は申請ができますので検討してはいかがでしょうか。
事務連絡(その80)でPCR検査名称の変更の通達がありますので合わせてご確認ください。また「新型コロナウイルス感染症に係る行政検査の保険適用に伴う費用の請求に関する診療報酬明細書の記載等について」の一部改正について(令和4年10月28日保医発1028第4号) と「(別紙)公費負担者番号」がでていますのでで一度ご確認ください。
レセプト点検徒然
北は北海道から西は兵庫県まで多くのレセプトを点検しています。DPC算定が多いですが、出来高入院、外来なども点検します。診療科もいろいろあるので実に多くの傷病名を目にします。また症状詳記やコメント付きのものがあるのでたくさんの情報と気付きをいただいています。通算点検歴はかなり長いですが、医療の進歩や新薬の薬価収載などがあり貯め込んだ知識だけなくいつも学習が必要です。
地域にかかわらず指摘が多くなるのは加算点数など自動算定にならないものです。列挙します。
・J038 人工腎臓障害者等加算 140点
・A210 難病患者等入院診療加算 250点
・B0012 特定薬剤治療管理料 初月加算 280点
・B0013 悪性腫瘍特異物質治療管理料 初回月加算 150点
・B001-2-6 夜間休日救急搬送医学管理料 600点
・B001-2-6 夜間休日救急搬送医学管理料、精神科疾患患者等受入加算 400点
・E003 造影剤注入手技料 6 腔内注入及び穿刺注入 ロその他のもの 120点
・K920 輸血料 不規則抗体価加算 *頻回輸血時 197点
・L008 全身麻酔困難患者 2,300点増点
あまりお目にかからない診療報酬があります。医療の質を上げるものだと考えていますので算定要件を満たしていないか確認することをお勧めします。
・B0011 ウイルス疾患指導料1 240点
*入院時、内視鏡前、手術前に肝炎ウイルス検査を実施するわりに算定がない。
・B00113 在宅療養指導料 170点
*個別に30分以上の指導がネック。在宅自己注射開始時の教育入院時が算定のチャンス。
・C100 退院前在宅療養指導管理料 120点 *試験外泊時に算定可能
2022年10月実績報告
レセプト点検件数 1,120件
延点検時間 66時間
移動距離合計 3,997㎞
移動時間合計 40時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都1道4県 11病院 9日間
*東京都2病院、北海道1病院、埼玉県4病院、神奈川県1病院、兵庫県2病院、茨城県1病院。
その他の業務
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、
武蔵野線、東武東上線、都営大江戸線、東横線、山手線、東海道新幹線、山陽新幹線、
上野東京ライン、神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、横浜線、
東京モノレール、スカイマーク、ポートライナー、JAL、快速エアポート。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、北朝霞、新秋津、秋津、菊名、鴨居、
小平、田無、高田馬場、品川、新神戸、地下鉄三宮、新長田、長田、高速長田、西神中央、
JR元町、阪神元町、三宮・花時計前、御崎公園、神戸新交通三宮、神戸空港駅、神戸空港、
大門、浜松町、羽田空港、羽田空港第2ターミナル、羽田空港第1ターミナル、札幌、
新千歳空港駅、新千歳空港、上野、石岡。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
久しぶりのとんかつ。神戸市営地下鉄西神・山手線の西神中央駅近くにある「和幸プレンティ神戸店」で「ひれかつ鍋御飯」をいただきました。普段はあまり肉類を食べないのですが、レセプト点検終了後にお店の前を通ったら急に食べたくなりました。疲労回復を体が求めていたのかもしれません。ヒレカツの卵とじはもちろんですが、ご飯がとてもおいしかったですね。
指摘3選
1.骨髄病理組織標本作成時の組織採取法は何ですか?
骨髄の病理組織標本作成を算定しています。採取料の算定がありませんが?
手術の実施がないので検体採取料が算定できますね。
検体採取料ですか?
はい、病理組織標本作成料は第13節病理診断に分類されていますが、
通則1に「第1部、第2部、第3部第4節の所定点数を合算して算定する(略)」
とあります。
第1部は初再診料、第2部は入院料、第3部第4節は検査料の診断穿刺・検体採取料です。
通則1はつまり、どう考えればいいのでしょうか。
病理組織標本作成料を算定するときは、併せて初診料や再診料が算定でき、
入院して行えば入院基本料や特定入院料が算定できるということです。
そして病理組織標本の作製には検体が必要なので、診断穿刺・検体採取料が算定できる
という意味です。
血液検査を算定するときに静脈血採取を算定するのと同じですね。
そうですね。採取方法や採取場所により点数が決まっています。
この場合は組織を採取しているのでD417組織試験採取、切採法が算定できますね。
D4173に「骨、骨盤、脊椎 4,600点」とありますが、これが算定できるのですね。
高い点数ですね。46,000円!もったいない。
医師、看護師、放射線技師など複数の医療従事者がかかわっているので、
算定を見逃さないようにしてほしいですね。オーダーはなかったのでしょうか。
今となっては…
例えば末梢血液一般検査のオーダーのときに、静脈血採取のオーダーがなかったとしてもおそらく算定しますよね。
そうですね。セットのようなものなので。
算定頻度が多いものはセットで理解すると思いますが、
そうでないものは漏れてしまう可能性があるでしょうね。
髄液検査といえば腰椎穿刺のように理解すればいいんですね。
そういうふうに組み合わせで理解することも一つのコツです。
検体採取料は項目が多いので整理しましょう。
ハイ、お願いします。
診断穿刺・検体採取料と主な検査料 注意が必要なもの
・D403 腰椎穿刺・胸椎穿刺・頚椎穿刺 ― 髄液検査、培養
・D404 骨髄穿刺 ― 骨髄像、培養
・D405 骨髄生検 ― 病理組織標本作成
・D4181 子宮頸管粘液採取 ― 頸管粘液一般検査、培養
・D4182 子宮膣部組織採取 ― 病理組織標本作成
・D4183 子宮内膜組織採取 ― 病理組織標本作成
まず検査料、次に診断穿刺・検体採取、局所麻酔などの薬剤料、検体検査判断料。
これらがワンセットです。
目的は髄液検査ですからね。
目的が何かということです。DPC算定の場合処置料は包括ですが、
検体採取料は出来高で算定できるのでその差は大きいですね。
処置料と診断穿刺・検体採取料の請求名称が同じもの
請求名 |
処置料 |
診断穿刺・検体採取料 |
脳室穿刺 |
J005 600点 |
D401 500点 |
後頭下穿刺 |
J006 300点 |
D402 300点 |
腰椎穿刺など |
J007 317点 |
D007 220点 |
骨髄穿刺 |
J011 310点、330点 |
D404 260点、280点 |
関節穿刺 |
J116 120点 |
D405 100点 |
上顎洞穿刺 |
J102 60点 |
D406 60点 |
扁桃穿刺 |
J103 180点 |
D406-2 180点 |
腎嚢胞穿刺など |
J012 280点 |
D407 240点 |
ダグラス窩穿刺 |
J013 240点 |
D408 240点 |
乳腺穿刺 |
J014 200点 |
D410 690点、220点 |
甲状腺穿刺 |
J015 150点 |
D411 150点 |
リンパ節等穿刺 |
J016 200点 |
D409 200点 |
2.処方箋料6種類以下と7種類以上 種類の判断は正しいですか?
処方内容を見ると6種類以下の68点になるような気がするのですが。
処方薬のオーダーを取り込んでいるので正しいはずです。
処方内容は次の通りです
バイアスピリン錠100mg1錠
アロプリノール錠100mg2錠
テルミサルタン錠20mg1錠
ランソプラゾールOD錠1錠15mg
アムロジピン錠2.5mg1錠
ツロブテロール塩酸塩錠1mg2錠
ロレルコ錠250mg2錠
薬剤は7種類です。
処方箋料の算定でいう種類とは薬剤名の数ではないんです。
これは7銘柄で服薬時間ごとに並べて点数を求めるとこうなります。
205円以下の場合(20点以下)は1種類と数えるので、7銘柄で2種類の薬剤になるんです。
処方 |
点数 |
①バイアスピリン錠100mg1錠(5.60) テルミサルタン錠20mg1錠(12.50) ランソプラゾールOD錠1錠15mg(26.40) アムロジピン錠2.5mg1錠(10.30) 1×朝 ②アロプリノール錠100mg2錠(7.70) ツロブテロール塩酸塩錠1mg2錠(5.80) ロレルコ錠250mg2錠(18.70) 2×朝、夕 |
|
それなら68点になります。
外来のレセプトで化学療法や処置・手術がない場合、処方料や処方箋料の比率が高いので
正しく算定する必要があります。算定件数も多く大きな増点になります。
処方の数が多いのでどうすれば正しい算定ができるでしょうか。
オーダー取り込み時に服薬時間ごとに点数が出てくる必要がありますが、
システム上難しいという声を聞きますね。今回は錠剤だけなのでわかりやすいですが、
散剤があると更に判断が難しくなります。
どんな工夫がありますか
6種類と7種類の判断は1処方ずつ薬価の計算をする必要がありますが、
問題になるのは概ね7銘柄~10銘柄が処方されたときだと考えていますので、
それらを抽出し計算してみるしかないでしょうね。
大変そう
例えば日にちを決めて該当する処方料を数件でもいいので計算してみることですね。
地道な作業ですが前回と同じ処方を続けている患者さんもいるので、
一度訂正されればその後の処方料が修正できるので効果は大きいでしょう。ガンバです。
*ガンバは死語かもしれません
ガンバですか。少しずつでも取り組んでみます。
3.DPC 呼吸不全の原因は何ですか?
入院期間20日間でコーディング点数は係数なしで41,859点。
呼吸不全の原因はカルテに記載がありますか。
気管支喘息と慢性閉塞性肺疾患があり、
労作性の呼吸不全増悪のため入院と記載されています。
治療は酸素吸入とテオフィリン点滴と内服で、酸素は毎分2㍑~3㍑を10日間実施。
他に呼吸器リハを実施しています。原疾患にコーディングするのが妥当でしょうね。
というと喘息かCOPDですね。
慢性2型呼吸不全の原因は慢性閉塞性肺疾患や肺結核、気管支喘息などと言われています。
労作性の呼吸不全増悪がコーディングのポイントになるでしょうね。
ブリンクマン指数の記載はありますか。
喫煙指数です。1日の喫煙本数×喫煙年数で求めます。
カルテを調べます。BIと記載がありますが。
それです。Brinkman Indexの略語です。いくつですか?
800になっています。
なので1,999点+係数で3,000点くらい増点になります。
医師と相談します。
ブリンクマン指数と発症リスク
ブリンクマン指数は1日の喫煙本数×喫煙年数で求めます。
1日20本、10年の場合20×10=200となります。
・200 ニコチン依存症管理料 算定要件
・400 肺癌
・600 肺癌高度
・700 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・1200 喉頭癌
最後までお読みいただきありがとうございます。
では、次回は11月30日を予定しています。