コロナ感染症に明け暮れた2021年が終わり2022年になりました。コロナ過の収束がいつになるかわからない状況ですが、医療機関で働く皆様は患者さんがいる限り、レセプト点検を仕事にしている私はレセプトがある限り、感染リスクと闘いながら業務は続けなくてはなりません。立場は違いますが、医療従事者として皆様と共に頑張っていきたいと意を強くしています。
昨年は多くの方々と交流ができました。今まで以上に親交を深めた方々や新たに出会った方々と、楽しくまた新鮮な気持ちでレセプト点検ができました。お世話になりありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。
医療機関が提供する医療サービスは、医師は的確な診断と医療の提供、看護師は看護診断による質の高い看護の提供、コメディカルの皆様は専門性のある技術の提供です。医事課はどうでしょうか?正しい算定と患者さんや医療従事者への情報提供だと思います。患者さんへの情報提供は公開医療講座や高額療養費などの医療サービスの利用に関する情報などがあります。広義には笑顔や愛語を通したサービスがあります。医療従事者への情報提供とは診療報酬の項目や算定要件を知らせることです。医療機関が一つの大きな輪を形成し算定に取り組む必要があると常々考えております。
独立以来、多くの医療機関のレセプトを点検する機会をいただいています。請求担当者にお会いすると「算定についてもっと勉強したい、もっと知りたい」という希望を持っている方が多くいらっしゃいます。レセプト点検終了時に、講評を兼ねた簡単な勉強会を行っていますが、当社はレセプト点検だけでなく、算定スキルを上げる勉強会や研修会も行います。この5年、埼玉県戸田市にある戸田中央総合病院グル―プ(TMG)の研修会を2つ受け持っています。一つは出来高算定の研修で、もう一つはDPCコーディング研修です。人体の仕組み、疾患の症状や治療法を学習し、その後で演習問題を解きスキルアップを目指しています。共に年間10回開催しています。
ご依頼があれば貴院に出向いて実施できますのでご検討ください。ご興味があれば「費用のご説明」の研修会費用をご参照ください。
2022年1月実績
レセプト件数 901件
延点検時間 43時間
移動距離合計 1,510㎞
移動時間合計 30時間
訪問した医療機関
1都5県 10病院 8日間
*東京都、埼玉県、神奈川県、兵庫県、新潟県、茨城県。
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武拝島線、西武多摩湖線、西武有楽町線、副都心線、東武東上線、
埼京線、大江戸線、東横線、横浜線、東海道新幹線、山陽新幹線、上越新幹線、山手線、
神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、常磐線。
その他業務
*DPCコーディング講習会2時間、出来高算定講習会2時間。
1.国民の休日 休日加算算定漏れについての指摘
下血を入院契機として12月29日に入院した患者さん。
30日に内視鏡的消化管止血術を実施しています。
緊急手術なら「国民の休日」なので休日加算が算定できます。
タール便と貧血で29日に入院しました。
30日に吐血あり胃内視鏡を実施したところ胃潰瘍から出血を認め、
緊急に内視鏡的消化管止血術を実施しました。
それなら休日加算の対象になります。
入院中の患者さんにも算定できるんですか?
できますよ。手術料通則12を読んでください。
「緊急のために休日に手術を行った場合に休日加算が算定できる」と
書いてますよね。
入院患者さんには算定できないと思っていました。
それに30日の午前中は外来診療しているので、
休日になるとは考えもしませんでした。
外来はどうなりますか?
カレンダーが赤い日は休日と認識しやすいですが、
12月29日~31日はカレンダーは黒表示ですが、国民の休日なので休日加算が算定できます。
この3日間に1,000点以上の緊急処置、緊急手術を実施たときは、深夜帯以外は休日加算です。
そうすると外来はどうなりますか?
診療を行っている診療科の外来は次のようになります。
30日に9時~12時まで外来診療をする場合、0時~6時は深夜、*6時~9時まで休日、
9時~12時まで時間内、12時~22時まで休日、22時~24時まで深夜です。
国民の休日の期間は時間外がないということになります。
【注】通常時間外は8時以前ですが、ここでは緊急受診を想定しています。
ということは外来透析の場合、「時間外・休日加算」が算定できますね。
算定できます。維持透析の場合1月1日以外、透析を実施していると思うので、
算定できているかどうか確認してください。
1月2日3日は仕事が休みなので休日と理解できますが、29日や30日の午前中まで
診療している医療機関は要注意です。
わかりました。他に注意点はありますか。
入院の場合、深夜帯に緊急手術を行うことがあるので算定もれに注意ですね。
また、持続緩徐式透析濾過(CHDF)やエンドトキシン選択除去用吸着式血液浄化法を行うことがあるので、開始時間を確認するといいですね。
確かに術後で夜間にCHDFを実施することがあるので部署内に周知します。
今年の年末は算定誤りがないように「国民の休日」を徹底して注意喚起します!
2.特定薬剤治療管理料についての指摘
敗血症の入院患者さんにバンコマイシン注の特定薬剤治療管理料235点を算定しています。
コメントに「2021年3月10日初回」と記載がありますが、前回の算定日と入院理由を教えてください。
誤嚥性肺炎で入院し、3月10日に特定薬剤治療管理料を算定していました。
その1回だけです。
8か月前ですね。退院はいつですか。
2021年3月20日に自宅に退院しました。
軽快退院ですね。
そうすると今回の特定薬剤治療管理料は初回になり、
470点と初月加算280点の合計750点が算定できます。
初回から4月目以降なので235点と理解していましたが…
特定薬剤治療管理料の目的は投与している薬剤の「血中濃度を測定し薬剤量を決定すること」です。この患者さんは軽快退院した後、今月、急性腹膜炎を発症し緊急入院後重度化し敗血症を発症したようですね。
そうです。入院理由は急性腹膜炎です。
入院後高熱と腹痛が続いたので動脈血培養を実施したところ、
MRSAが検出されバンコマイシン注を投与していました。
新たに敗血症を発症したので前回実施の時と異なる状態(疾患)なので
今回は750点の算定です。
初回実施から4月目とは、生涯に実施した初回からではないので、
算定の仕方を一度整理しましょう
具体的な例を教えてください。
血中濃度測定の理由は、薬剤の初回投与後のモニタリング、副作用の出現時、症状悪化の時などです。
抗てんかん薬を服用していて発作がたびたび出現したり、眠気やふらつきなどの副作用と思われる症状が続いたときに、医師は薬剤量が合わないかもしれないと疑念をもち血中濃度を確認します。その結果で薬剤量を決定します。そこで一旦疑念はなくなります。そのあとで再度血中濃度の測定が必要となる状態になったときは初回になります。
そう考えるのですね。その期間はどれくらいなんでしょうか。
具体的な期間は提示されていないので医師の判断になると思います。
実施の都度、理由を確認するといいのではないでしょうか。
【特定薬剤治療管理料算定の留意点】
算定要件は「薬剤の血中濃度、治療計画の要点を診療録に添付又は記載」です。
特定薬剤治療管理料を算定しているレセプトは、個別指導の時に必ずと言っていいほど抽出されます。治療計画の要点を記載していない医師が多いとわかっていて、自主返還と指摘できるからです。
治療計画は薬剤量を決定することを目的としていることから、次の記載が想定されます。
「薬剤は現状維持、1錠増量、1錠減量、中止、経過観察」など。
医師に算定要件を伝え、記載の監査を実施しましょう。
3.DPCコーディングについての指摘 変更事例 両胸水 → 急性膵炎
DPCコーディング
両胸水 040190 ① 入院15日 *①は分類番号
入院契機病名:両胸水 入院時併存症:急性膵炎
入院日に持続的胸腔ドレナージを実施しドレーン法を7日間算定。
酸素吸入を5日間(2㍑~3㍑)実施。
入院2日目からガベキサートメシル塩酸塩100㎎3瓶×10日間実施。
治療内容から医療資源最多は急性膵炎にならないでしょうか。
カルテを確認したらアミラーゼ180,リパーゼ100と高値。
症状は胸痛、呼吸困難、上腹部痛でした。
ドレーンを抜去し酸素吸入終了。ガベキサートメシル塩酸塩の投与期間から、
コーディイングは急性膵炎でいいと思います。
医療資源を比較すると膵炎の治療が多いです。
膵臓食を提供していることもあり医師と相談します。
急性膵炎にコーディングすると胸水が定義副傷病に該当するので、
060350 ②となり、42,541点です。胸水は38,217点なので、
医療機関係数加点前の点数比較で+4,324点です。
胸腔ドレナージを入院日に実施していたので胸水にコーディングしました。
医療内容を確認する必要がありますね。
資料資源を考えるときは手術料、処置料はもちろん大事ですが、
それ以外に注射薬剤、リハビリテーション、治療食などを考慮するといいですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2月は初めて点検する病院があり、担当の方々とお会いするのを楽しみにしています。
では、次回報告をお楽しみに。