光陰矢の如し
早いもので診療報酬改定から6か月経ちました。9月30日までの経過措置期間が終了となりますので注意してください。仕事をしていると1日は長いと感じることがあっても、月単位や年単位で振り返ると早く感じますね。皆様はどのように感じますか?
レセプト点検のときは目の前に置いてあるレセプトの山がすこしずつ低くなっていくので経過がわかり、ゴールがはっきりしているのでアドレナリンの助けもあり集中できます。仕事の全体像が分からないときは長く感じるかもしれませんね。レセプトの提出までは残業がつきものですが、1日のゴール(業務終了時間)を決めることで集中力が増すことが多いので、保険期間の突入前に部署内で週間予定がわかるようにしておきましょう。
新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて
令和2年2月14日に通知されてから令和4年9月27日付「その77」まで続いています。「その77」の内容は重要なので記載します。
また、その72で二類感染症患者入院診療加算(250 点)は「医学的に初診といわれる診療行為がある場合に、当該点数を算定することができる。」とあります。医学的に初診とは初診料を算定したときではありませんので注意しましょう。一つの診療科で初診料を算定している患者さんには他の診療科で初診料の算定ができないからです。
(例) 眼科に受診中の患者が呼吸器症状を訴え内科を受診しPCR 検査を実施した場合
(算定)院内トリアージ実施料 300点
二類感染症患者入院診療加算 250点
2022年9月実績報告
レセプト点検件数 1,016件
延点検時間 47時間
移動距離合計 1,999㎞
移動時間合計 25時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都5県 9病院 7日間
*東京都1病院、埼玉県3病院、神奈川県1病院、静岡県1病院、兵庫県2病院、茨城県1病院。
その他の業務
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、武蔵野線
東武東上線、都営大江戸線、東横線、山手線、東海道新幹線、山陽新幹線、上野東京ライン、
神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、横浜線、東京モノレール、スカイマーク、
ポートライナー。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、北朝霞、新秋津、秋津、菊名、鴨居、
田無、品川、新神戸、地下鉄三宮、新長田、長田、三宮・花時計前、御崎公園、三宮、上野、
石岡、神戸空港駅、神戸空港、大門、浜松町、羽田空港第1ターミナル、羽田空港、新横浜、
熱海。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
新長田駅の近くに「アスタプラザ」という商店街+マンション群があります。アスタプラザイーストにある蕎麦屋「いづも」さんの「えび天おろしそば」がとてもおいしかったです。
アスタプラザの一角に高さ18メートルもある鉄人28号の巨大なモニュメントがあります。
ご興味のある方は長田区ホームページをどうぞ。阪神・淡路大震災からの復興のシンボルだそうです。
指摘3選
1.院内トリアージ実施料と二類感染症患者入院診療加算は併算定ができます
急性胆管炎で緊急入院した患者さんです。入院時にPCR検査を実施していますが、
院内トリアージ実施料は算定できないでしょうか。
呼吸器疾患ではないので算定しませんでした。
PCR検査を必要とする状態や症状があれば疾患に限定されている訳ではないので
算定できますよ。
カルテをみてみます。BT39度と記載があります。
体温ですね。急性胆管炎は高熱が出やすく受診時の主訴に「熱がある」場合、
この時期最初に疑うのは「コロナ感染」ではないでしょうか。
それでPCR検査を実施するので院内トリアージ実施料の対象になります。
そもそも急性胆管炎は主訴(S)や所見(O)、血液検査、画像診断の結果確定したと思うので、
受診時にはわからないですからね。
熱の分類
微熱(37℃以上、37.5℃未満)
中熱(37.5℃以上、38.5℃未満)
高熱(38.5℃以上)
熱の種類 | 特 徴 | 日内変動 |
弛張熱(しちょうねつ) | 37℃ 以下にならない | 1℃以上 |
間欠熱(かんけつねつ) | 37℃ 以下になるもの | 1℃以上 |
稽留熱(けいりゅうねつ) | 38℃ 以上の発熱が持続し | 1℃以内 |
周期熱(しゅうきねつ) | 周期的に発熱を繰り返すもの | |
波状熱(はじょうねつ) | 有熱期と無熱期を不規則に繰り返すもの |
そう考えるんですね。
特に初診患者の場合、受診時にわかるのは主訴と所見の情報ですね。
そうです。通院中や既往歴があるときは受診時に診断が付くこともありますが、
初診患者さんは診断が確定するまでに一定の時間がかかるので、主訴と所見が重要です。
検査を実施し入棟後に傷病名が確定することも多くあります。
受診時にコロナ感染を疑う要素があれば院内トリアージ実施料が算定できるでしょう。
そうすると整形外科や耳鼻咽喉科を受診したときも算定できると考えていいんですね。
そうです。受診患者さん全員にPCR検査を実施するわけではないので、
理由があるはずです。それを見つければ算定につながります。
予定入院の場合はどう考えればいいですか。
その場合も来院時に発熱や咳、胸痛などがありPCR検査を実施すれば
算定できるでしょう。
検査を必要とした状態をコメントするといいと思います。
「発熱あるため」「咳嗽あるため」「胸痛の訴えあるため」など個別性が必要です。
二類感染症患者入院診療加算は算定できますか。
事務連絡(その63)問1の記載から「必要な感染予防策を講じた上で外来診療
を実施した場合」二類感染症患者入院診療加算が算定できます。
この外来診療とは入院時と読み替えることが可能です。
急性胆管炎で39度と発熱が見られたので、
院内トリアージ実施料と二類感染症患者入院診療加算が算定出来ると
判断していいということですね。
そうです。
ここでいう二類感染症患者入院診療加算はあくまでも院内トリアージ実施料の加算なので、
入院基本料等加算の二類感染症患者入院診療加算を算定していても算定できるのでご注意を。
ややこしいですが医学管理料と入院料両方に
二類感染症患者入院診療加算があってもいいということですね。
That’s right それは右です。
実は院内トリアージ実施料の二類感染症患者入院診療加算は事務連絡(その72)で、
算定期間が9月30日までになっていたのですが、(その77)が通知され10月31日までに延長されました。
今後も陽性患者数の推移により延長される可能性があるので通知を確認してください。
わかりました。
算定もれがないように、院内トリアージ実施料と二類感染症患者入院診療加算の
セット入力のコードを作ってみます。
佐藤さんもジョークを使うんですね。
すみません。
夜間休日救急搬送医学管理料と院内トリアージ実施料は併算定できますか。
事務連絡(その9)で院内トリアージ実施料は曜日や時間を問わず、
初診でも再診でも算定できると通知されています。
従来は併算定はできませんが、臨時的診療報酬として算定できます。
査定があったという報告も受けていません。
インターネットで検索すると「併算定できない」となっているサイトがありますが、
体験上多くの医療機関で算定しています。
点数が高いのでしっかり算定します。
2.全身麻酔困難患者 BMI35以上 胆石症4Fがヒント
身長体重を確認してもらえますか。
はい。身長155㎝、体重85㎏です。
BMIですか?ええとそれは何ですか。
BMIはBody Mass Indexの頭文字で、肥満度を表す肥満係数です。
求め方は体重÷身長(m)の2乗です。いくつになりますか。
最初に身長をmにして2乗なので、1.55×1.55=2.4025。
体重85÷2.4025でいいんですね。35.379です。
BMIは通常小数点1位で表すので35.4ですね。
全身麻酔困難患者の(ハ)を見てください。
あ、BMI35以上の患者とあります。
ということは全身麻酔困難患者に該当するということですね。
そうなりますね。
全身麻酔困難患者に該当する項目は全部で26あります。
2時間までの麻酔料が6,000点から8,300点になるので2,300点の増点です。
麻酔料からオーダーがあればいいのですが…
と言っても請求担当者でもわかる項目はいくつかありますよ。
(ウ)発症3か月以内の心筋梗塞患者、(カ)ペースメーカーや除細動器の埋込患者、
検査データでわかるもの、傷病名でわかるもの、特定の処置を実施している患者、
そしてBMI、計算で求めるので該当非該当が明らかです。
麻酔医や手術室スタッフと話し合って算定につなげないといけませんね。
胆石症になりやすい状態を「4F」や「5F」で表します。
・Fatty 太っている
・Female 女性
・Forty to fifty 40代から50代が多い
・fair 全身症状が良い (*白人と表現しているものがあります)
・Fertile 多産
胆石症手術の時はBMIを求めるといいと思いますよ。
この事例は50代女性なのでBMIが知りたかったんです。
ちょっとした気づきで点数が上がるんですね。
実践します。
3.DPC 入院契機:慢性膵炎・急性増悪 コーディングはどうなる?
深夜に緊急入院し初日にミラクリッド注を点滴しています。
AMYはどれくらいあるのでしょうか。
ちょっとお待ちください。250と高くCRPも高いです。
酸素吸入を実施していることからも慢性膵炎の急性増悪に該当すると思います。
ICDはK85.9になるのでコーディングは急性膵炎と同じ060350ですね。
あとで医師に確認してください。
慢性膵炎でも急性増悪はICDが異なりDPCは急性膵炎扱いになるのですね。
そうです。慢性膵炎なら深夜に緊急入院することもないでしょうから、
その時点で入院契機病名を確認するといいですね。
ミラクリッド注の効能は急性膵炎、慢性再発性膵炎の急性増悪期なので、
なおさら確認が必要ですね。慢性膵炎の治療薬は主に経口薬なので外来でフォロー出来ます。
そうでしょうね。慢性膵炎が急性増悪状態となり緊急受診をしたのでしょう。
そうなると救急医療管理加算1に該当する可能性が高いですね。
実日数が20日と長く、点数を比較すると060350は47,955点、060360は42,190点で
救急医療管理加算が420点×7日から1,050点×7日になれば合計で10,175点の増点になります。
これに病院係数が加点されるので大きな差になりますね。
本当にそうですね。入院契機病名は大切ですね。
入院時の患者さんの状態を知らないと入院契機病名にコーディングする傾向があります。
この事例はこんな会話があったのではないでしょうか。
医事課「先生、入院契機は何ですか。」
医師「膵炎だよ」
医事課「わかりました」
この会話だと慢性か急性か急性増悪かわからないですね。
カルテの傷病名欄に慢性膵炎とあるので入院契機病名が慢性膵炎になった可能性がありますね。
たぶんそうだと思います。
というより確認しなければなりません。
同じような傷病名に急性腎盂腎炎と慢性腎盂腎炎があります。
腎盂腎炎は急性と慢性では大きな違いがあるので要注意です。
入院契機病名の選択も医師任せでなく、
診療情報管理部門の見解やカルテ記載を参考に決定します。
腎盂腎炎 |
症状 |
治療 |
ICD |
DPC |
10日 |
慢性 |
微熱・全身倦怠 |
外来 経口抗菌剤 |
N11.9 |
110280 |
24,452点 |
急性 |
悪寒・戦慄・高熱 |
入院 抗生剤点滴 |
N10 |
110310 |
25,700点 |
最後までお読みいただきありがとうございます。
10月は札幌の医療機関を訪問します。しっかりと点検を行ってきます。他の医療機関の皆様も点検をお楽しみに。
では、次回は10月31日を予定しています。