1年の計は元旦にあり その前に今年1年に感謝
皆様はどんな1年でしたでしょうか。レセプト請求をしていると1年はアッという間に過ぎてしまいます。10日にレセプトオンライン送信(昔は風呂敷に包んだりソリタの箱に入れて持参していました)、入院費の請求書発行、診療行為別などの統計資料の作成、中旬から月末は生活保護要否意見書の提出と医療券の請求、月末から月初に査定の通知があり分析と再請求の準備などなど。1月はマッピーマンデーの制度ができてから業務稼働日が少なくなり、5月の連休と共に医事課にとって厳しいスケジュールです。4日から通常診療を行う医療機関が多いと思いますが、3日からレセプト出勤している方もいらっしゃるでしょうね。本当にご苦労さまです。
私の点検初めは4日の茨城からです。今年1年もレセプト巡礼を続け、多くの方々とレセプト談義ができればいいと思っています。診療報酬改定の翌年なので昨年より落ち着いた年になると思いますが、「新型コロナウイルス・臨時的診療報酬」が続くので、通知を見逃さずしっかりと対応することが重要です。
医事知識の目標を立ててみましょう。ちょっとしたことでいいと思います。頭の中で考えたことを書き出してみるのもいい方法です。こんな目標はどうでしょうか。
・傷病名に急性や慢性の接頭辞を入れる (例)腎盂腎炎で緊急入院の時は急性腎盂腎炎
・疑い病名に転帰を入れる (例)脳腫瘍疑い MRI異常なし 中止
・症状や状態を傷病名欄に記載しない (例)発熱、人工肛門造設状態
私の目標は来年度に「個人会員・医療機関会員を募る」です。メーリングリストなどで毎月「レセプトさとう通信(仮称)」の発行や、直接メールで質疑応答を行い皆様のお役にたちたいと考えています。目標を公開することで意識づけができるので達成に向けて準備していきます。
それでは本年が皆様にとって心技体ともに実り多い年になることを祈念しています。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
2022年12月実績報告
レセプト点検件数 960件
延点検時間 62時間
移動距離合計 2,129㎞
移動時間合計 26時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都3県 9病院 9日
*東京都2病院、埼玉県4病院、兵庫県2病院、茨城県1病院。
その他の業務
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、
武蔵野線、東武東上線、都営大江戸線、東横線、山手線、東海道新幹線、山陽新幹線、
上野東京ライン、神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、阪神電気鉄道、
東京モノレール、スカイマーク、ポートライナー。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、小平、田無、高田馬場、品川、
新神戸、地下鉄三宮、高速長田、高速神戸、ハーバーランド、三宮・花時計前、御崎公園、
神戸新交通三宮、神戸空港駅、神戸空港、羽田空港、羽田空港第1ターミナル、大門、浜松町、
上野、石岡。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
家族亭
毎月神戸の病院におじゃしていますが、いろいろな場所で家族亭を見かけます。蕎麦、うどん、
丼などが食べられる庶民的なお店です。サンチカ店、西神中央店、デュオこうべ店を利用したことが
あります。おすすめは冷たいおそばです。
指摘3選
1.「佐薬」に傷病名は不要です
外来のレセプトですがずいぶん傷病名が多いですね。
減らしたいと思っているのですが、
過去の傷病名が残っていたりしてなかなか少なくなりません。
どうすれば減らせるのでしょうか。
まず傷病名を一つずつ見てみましょう。
この患者さんは内科と整形外科に受診中で、今月「急性腰痛症」と「胃炎」が付いています。
はい、ロキソニンとムコスタが処方されています。
「胃炎」は医師の診断ではありませんね。
ロキソニンとムコスタは一緒に処方されることが多いので
ずっと医事課が付けていました。わかるんですね。
医師なら急性胃炎など接頭辞が付くと思うので。
受診時に胃炎の症状はなかったでしょうね。
でも胃炎を付けないと査定されるような気がして…
この場合ムコスタはロキソニンの「佐薬」になるんです。
「佐薬」って何ですか?初めて聞きました。
他の薬の効果を強めたり弱めたりする薬のことです。
この場合はどういう理由になるんですか?
ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛剤(NSAIDs)は強い鎮痛作用があり
痛みや発熱に効果がありますが、副作用として消化性潰瘍になることがあるんです。
NSAIDs潰瘍ですね。
予防のためにムコスタなど消化器官用剤を一緒に処方することがあり、
これを「佐薬」と言います。
何を調べればわかるのでしょうか。
厚生労働省から「診療報酬請求書等の記載要領等について」が通知されています。
医学通信社の診療点数早見表2022年4月版では1561㌻の「(15)傷病名欄について」
に記載がありますね。この「診療報酬請求書・明細書の記載要領」には
レセプトやカルテに関する重要事項が掲載されているので一度読んでください。
記載がありました。
1562㌻の枠内が重要で次の場合は傷病名がいらないと記載があります。
・175円以下の薬剤で「佐薬」「一過性の症状に対する薬剤」
具体例は別紙1に記載されていて1~6のカテゴリーがあります。
佐薬としてのムコスタは1の消化器官用剤なので傷病名は要らないんです。
ではロキソニンとムコスタが処方されたときは
「急性腰痛症」だけでいいんですね。
そうです。
他では入院患者さんが入院初日に不眠を訴えると眠剤が1錠投与されることがあります。
「不眠症」とレセプトに記載しているかもしれませんが、一過性の症状に対する薬剤なので
傷病名は不要です。
はい、不眠症にしていました。
これからは佐薬を意識して無駄な傷病名を付けないようにします。
「消化器官用剤」の確認の仕方
薬剤には種類ごとに薬効分類があり、分類番号が付与されています。
ムコスタ錠は23消化器官用剤>232消化性潰瘍用剤>2329その他の消化性潰瘍用剤
に分類されています。薬価基準早見表で確認できますが、
私は「医薬品検索イーファーマ」を利用しています。
「医薬品情報、添付文書情報、成分一致薬品」が確認できるので便利です。
薬効分類の活用法の1例を記載します。
静脈麻酔に該当する注射薬は薬効分類111の全身麻酔剤で、112催眠鎮静剤は該当しません。
薬効を調べるときは傷病名だけでなく薬効分類を確認すると算定に役立ちます。
2.夜間休日救急搬送医学管理料 精神科の受診はありませんか?
インフルエンザ菌肺炎で夜間に緊急入院した患者さんですね。
入院日にハロペリドールが処方されています。不穏状態だったのでしょうか。
在宅でも不穏状態で6か月以内に精神科や心療内科を受診している患者さんなら
「夜間休日救急搬送医学管理料、精神科疾患患者等受入加算400点」が
算定できますよ。処方理由はカルテに記載がありますか。
入院時に不穏があり大きな声を出していたようです。
不穏は環境の変化で起こることがありますが、精神科疾患の可能性があるので
精神科受診歴を確認してください。
確認方法にどんなものがありますか?
看護記録のアナムネや持参薬管理を行った薬剤部の情報が参考になります。
お薬手帳があれば処方の有無と受診歴がわかりますね。
看護記録を確認します。
入院時に精神科を受診していると現病歴欄に記載がありました。
同伴の家族から聴取したようです。
それなら算定できますね。
この加算は自動算定ではないので情報収集が必要です。
3. DPC 横紋筋融解症(160610) → 尿路感染症(110310)に変更
横紋筋融解症にコーディングしていますね。
コーディングデータを見ると尿培養と感受性の算定があり、
抗生剤の点滴を7日間継続しています。尿路感染症の診断は無いですが、
医師に確認してください。入院時の状態はどうでしたか。
体温が38度、高度虚脱状態でした。
入院時の検尿で白血球(+)で膿尿があったため尿培養を行ったようです。
感受性2菌種が検出されました。
入院契機が脱水症ですが尿路感染症の発熱により脱水と
全身虚脱を呈し横紋筋融解症の診断になったのでしょうか。
いずれにしても医療資源は抗生剤点滴ではないかと思います。
そのように指摘され理解できました。
漠然としていますがコーディングに必要なものはどんな知識ですか。
もちろん知識は必要ですが、コーディング誤りの原因の一つにこの事例のような抗生剤の
見落としがあります。出来高算定の時は抗生剤の点滴があれば傷病名を医師に聞いたはずです。
DPCになって包括部分の傷病名を確認する意識が薄れてしまったように思います。
確認すればコーディング候補病名に尿路感染症が入ったのではないでしょうか。
抗生剤投与に対する評価を行うことで適正なコーディングができると思っています。
確かに出来高算定の時は病名漏れに注意していました。
DPC算定もその点は同じですね。
コーディング変更により10日間の入院なので24,966点が
25,700点になりました。ご指摘ありがとうございました。
最後までお読みいただきありがとうございます。次回は1月31日を目標に頑張ります。
1年間記事を書いてきました。多くの方々に読んでいただいたことに感謝を申し上げます。
多少なりとも日常業務のお役に立てたなら幸いです。
新しい年が皆様にとって心技体の整った充実した年になりますよう、お祈りしております。