レセプトって面白い
そう思って業務にあたっている方が多いと思います。仕事が面白いと感じると知識がついてきます。知識が増えるとさらなる知識を求めます。そうなるとレセプト業務がますます楽しくなると思います。正のスパイラルです。私はそうして知識を身につけてきました。
レセプト作成には繰り返し入力するパターンと診療報酬を探りながら入力するパターンがあります。前者は診察料とdo処方の処方箋料、主に外来です。入院ではポリペクや鼠径ヘルニア手術などのパス運用の予定入院などです。後者は緊急手術や緊急処置などが該当します。特に早見表にそのものズバリの診療報酬名の記載がないと医事課内で議論したり書籍やインターネットを調べながら入力を決定することになります。いずれの場合も傷病名や診療記録を確認していると思いますが、これが知識の蓄積につながります。資格試験を受験するときは当然参考書などを繰り返し読み学習を積み重ねていきます。それと同じ工程を日々の業務で行わなければなりませんが、受験と違いレセプトの作成は短期決戦です。特に外来は診療終了時に一部負担金を受領する必要があるので知識の蓄え(知識の引き出し)を増やしておく必要があります。
そのために有効なのは疾患や人体に関する知識を増やすことです。診療報酬名を覚えるだけなくその医療行為の目的を知ることがとても重要だと思っています。目的を知れば適正な傷病名の選択につながります。数式にすると「レセプト=傷病名+診療報酬」となります。それは当たり前と思うでしょうがレセプト入力の過程でどれだけ知識の引き出しを増やすことができ、常に最適な引出しをいち早く開けることができるか、それが自身のスキルにつながります。
私が実施するレセプト精度点検は終了後にエクセルで点検結果を当該病院にその場でお渡しします。その表には病院で再点検した結果を記載する欄があります。それを見て指摘の結果の適否が理解できます。また対面で点検事例についてディスカッションすることもあります。この場合リアルタイムで意見交換ができるので、相互の関係が深まり点検知識と請求知識の蓄積につながると思います。
指摘内容 | 確認結果 | レセプト点数 | 確認後点数 | 増減 |
コーディング:低体温/ 抗生剤投与あり感染症は無いでしょうか。尿路感染症なら副傷病ありになります。 | 医師に確認したところ肺炎を併発していたので肺炎にコーディングを変更した。 | 34,529 | 36,490 | 1,961 |
パーキンソン病あり、難病患者等入院診療加算を算定できないでしょうか。 | ヤール分類1のため算定対象外 | 59,988 | 59,988 | 0 |
2024年4月実績報告
レセプト点検件数 930件
延点検時間 70時間
移動距離合計 4,005㎞
移動時間合計 41時間
レセプト点検・適時調査支援に訪問した医療機関
1都3県 9病院 11日間
*東京都2病院 埼玉県4病院 愛知県1病院 兵庫県2病院
その他の業務
*出来高算定講習会、DPCコーディング講習会 各1回
*打合せ
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武多摩湖線、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、埼京線、
東武東上線、東海道新幹線、山陽新幹線、東海道本線、JR神戸線、神戸地下鉄西神山手線、
神戸地下鉄海岸線、国際興業バス。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、小平、一橋病院前、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、田無、品川、
名古屋、刈谷、新神戸、神戸、兵庫、ハーバーランド、御崎公園、宿、永田町。
移動の楽しみは食事と甘いもの、たまに観光
【ハーバーランド・モザイクの謎】
初めて神戸の病院でレセプト精度点検を行ったのはコロナ過が始まった2020年(令和2年)12月です。それから他の神戸の病院から依頼をいただいたので、神戸の巡礼は今年で4年目になります。ターミナル駅や最寄り駅と病院を往復するだけなので、神戸についてごくごく一部しか知りません。この4年で変わったことは2020年は新幹線の自由席で十分座れましたが、年を追うごとに乗客が多くなり今では指定席予約が必須です。私の出身は宮城県ですが宮城では仙台市がメジャーなので仙台県と思っている方がいるかもしれません。これは兵庫県と神戸市の関係に似ていると思います。
神戸の謎の一つにハーバーランド・モザイクがあります。モザイクの字を見て色とりどりの建物があるのではと思い行ってみました。しかしそういう名前のビルはなく地図を見てもわからず、夜だっとこともありホテルに帰りました。デュオこうべでつながっている地下鉄ハーバーランド駅、神戸駅からホテルへの移動は覚えたのでモザイクは次のテーマにします。
指摘3選
1.NYHA分類を確認しましょう 透析障害者等加算
84歳で透析を導入した患者さんです。併存症にうっ血性心不全がありますが
NYHA分類はわかりますか。
NYHA分類ですか。
NYHA分類はニューヨーク心臓協会(New York Heart Association)が作成した
心不全の重症度分類です。
何と読むのでしょうか
NYHAの日本語表記は二ーハやニハとなっていることが多いようです。
具体的にどのような症状でしょうか。
ワンポイントを確認してください。
厚生労働省のホームページからの抜粋です。
NYHA分類 (厚生労働省)
I度 |
心疾患はあるが身体活動に制限はない。 日常的な身体活動では疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生じない。 |
II度 |
軽度から中等度の身体活動の制限がある。安静時又は軽労作時には無症状。 日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。 |
III度 |
高度の身体活動の制限がある。安静時には無症状。 日常労作のうち、軽労作(例えば、平地歩行など)で疲労、動悸、呼吸困難、失神あるいは狭心痛(胸痛)を生ずる。 |
IV度 |
心疾患のためいかなる身体活動も制限される。 心不全症状や狭心痛(胸痛)が安静時にも存在する。 わずかな身体活動でこれらが増悪する。 |
難しいですね。
NYHA分類にあてはめると次のようになります。
インターネットで検索したものからのまとめです。
NYHAⅠ 通常の身体活動では症状がない
NYHAⅡ 坂道や階段の昇降で症状が出るが平地では症状なし
NYHAⅢ 安静時は症状がないが平地を歩くだけで症状出現
NYHAⅣ 安静時にも症状がある
以上が概略です。
送迎で透析に来院する患者さんで車から降りてすぐ透析室に行かず、
椅子に座っている方がいます。
透析室のスタッフが車椅子で迎えに来て移動するんです。
うっ血性心不全の診断ありますがNYHA分類はどれくらいでしょうか。
医師に確認が必要ですがⅢに該当するかもしれませんね。
その場合は人工腎臓障害者等加算(ソ)に該当します。
算定もれがないようにしましょう。
うっ血性心不全の患者さんで自分で透析室に移動できない患者さんは
ⅡかⅢだと思うので医師に確認しましょう。
わかりました。確認し算定につなげます。
2.創傷処理ですか、皮膚切開ですか
皮膚切開術でなく創傷処理ですか?
オーダーは創傷処理でした。
可能性はあるでしょうが… カルテに〇針ナートなど記載があるか確認しましょう
他に記載はありますか。SOAPはどうですか。
オーダー元に確認しましょう。
そうします。
創傷処理と皮膚切開を部署内で学習するときはどう考えればいいでしょうか。
創傷処理は開放創をふさぐのが目的で、皮膚切開術は炎症(閉鎖創)を開くのが目的です。
○○炎とあれば皮膚切開術の可能性が高いです。
1つだけ、壊死性筋膜炎やフルニエとあるときは創傷処理かもしれないので注意が必要です。
フルニエ壊死は男性の会陰部や陰嚢に起こる重症感染症です。
長径が長くても切開の長さは2・3㎝くらいでしょうね。長く切ると傷跡が残るので。
3㎝の切開でも長径が10㎝なら640点、11㎝なら1,110点です。
医師と連携し算定誤りに努めます。
3. DPC 2型糖尿病性潰瘍 ICD二重コードは†印☆印のどちらを使いますか
コーディングデータを見るとインスリンの投与はなくプロスタンディン軟膏処方による皮膚科軟膏処置がメインのようです。
2型糖尿病性潰瘍のICDはE11.5†・L98.4☆の二重コードです。この場合†印、☆印のどちらにコーディングしてもいいんです。この事例は糖尿病でなく皮膚潰瘍の治療がメインなのでL98.4を採用し100100にコーディングできます。
糖尿病なので10007×にコーディングしました。
入院は8日間なので100100にコーディングすると
19,074点から20,352点に増点しますね。
さらに右足趾糖尿病性壊疽がありビタメジン内服があるので下肢末梢神経障害による
足壊疽の発症だとおもいます。そうなると2型糖尿病性足壊疽はE14.5†・I74.3☆なので
I74.3 にコーディングも可能です。
下肢エコーやABI検査を実施していました。
I74.3は050170に該当し循環器系の疾患になります。
検査からもMDC05でいいかもしれませんね。
皮膚潰瘍があるので「副傷病あり」となり050170②に該当します。21,280点ですね。
糖尿病だと思ってコーディングしたのですが
単純ではなかったということですね。
2型糖尿病でインスリン投与による血糖コントロールなら
10007×②で問題ないでしょうが、その場合は20,738点になります。
足壊疽があるので治療の医療資源料がコーディング決定のポイントですね。
医師や診療情報管理士と情報交換し最終決定します。
糖尿病は合併症が多くICDが二重分類になるものが多いので
「糖尿病」の決め打ちでなく幅広く考えましょう。
わかりました。
・糖尿病性腎症 E11.2†・N08.3☆
・糖尿病性網膜症 E11.3†・H36.0☆
・糖尿病性末梢神経障害 E11.4†・G63.2☆
その他にも多くの合併症をともなう。
ICD-10内容例示表から「.0~.8」の合併症を知ることができる。
†印は基礎疾患を表し☆印は発現症状を表す。
糖尿病性皮膚潰瘍と糖尿病性足壊疽は内容例示表に二重分類と明示はないが、
上記下線部の考えに基づき二重分類と考える。
引き続き令和6年度の新規精度点検の御依頼をお待ちしています。特に首都圏の医療機関は大歓迎です。
1日の寒暖差で体調を崩さないようにしましょう。
次回は6月上旬です。
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