いざ!診療報酬改定
5月下旬に診療点数早見表が届き改定内容がいろいろわかってきたと思います。医事コンのテスト入力を経て6月1日(土)に外来診療を行っているところは最初の入力はうまくいったでしょうか。夜勤帯に入力し一部負担金を受領する救急医療機関はトラブルはありませんでしたか。改定後初めての入力は緊張するものです。私も記憶があります。「診療報酬改定により6月1日から医療費の一部負担金が変わります」と院内掲示をしていても患者さんから質問されるので、レジ担当者はいつもより時間がかかるでしょう。
入院担当者は5月に入院し6月上旬に退院会計を行う場合、旧点数と新点数の入力の画面を開くので少し手間がかかりますね。さらに5月分レセプトを提出前に点検をするので早見表を2冊用意して大変なことと思います。私も新点数に関する記事を医学通信社から依頼があり書き上げたところですが、6月4日から5月分レセプト巡礼が始まったので頭の切り替えが必要です。1日でも早く新点数に慣れるべく早見表を開く回数を増やし、現場の皆様に負けないスピード感を持たなければなりません。レセプト点検は「佐藤VS現場の皆様」という気持ちで行っています。もちろん敵同士ではなくお互いに教え合う、刺激し合う関係ですが。
5月の巡礼は首都圏と愛知だけなのでかなり時間に余裕がありました。8月に1病院から精度点検の新規ご依頼がありました。引き続き新規ご依頼をお待ちしております。
朗報です
遅ればせながら本日(6月4日)DPC点数早見表を入手しました。思い当たる6桁をいくつか確認したところ「060280アルコール性肝障害」に念願の樹形図が追加されました。今までもやもやしていたものがなくなり晴れやかな気持ちです。新旧対比してみました。
治療は①保存的治療 ②MAP輸血 ③腹水濾過濃縮再静注法(CART)
傷病名はアルコール性肝硬変(A)、非代償性肝硬変症Child-Pugh分類10点・重症度2(B)で比較します。入院期間は14日。*Child-Pugh分類はDPC点数早見表参照
旧 新
① A 060280xxxxxxxx 33,946点 060280xx99xxxx 34,005点
B 060300xx99x0xx 33,026点 060300xx9900x1 36,666点
② A 060280xxxxxxxx 33,946点 060280xx97xxxx 38,488点
B 060300xx97000x 38,386点 060300xx97x0x1 39,822点
③ A 060280xxxxxxxx 33,946点 060280xx01xxxx 出来高
B 060300xx0100xx 出来高 060300xx04x0x2 出来高
飲酒歴が長くなるとアルコール性といえない状態になることも考えられるので、入院時には医師に傷病名を確認しましょう。
2024年5月実績報告
レセプト点検件数 580件
延点検時間 27時間
移動距離合計 1,079㎞
移動時間合計 15時間
レセプト点検・適時調査支援に訪問した医療機関
1都3県 7病院 5日間
*東京都1病院 埼玉県3病院 神奈川県2病院 愛知県1病院
その他の業務
*出来高算定講習会、DPCコーディング講習会 各1回
*打合せ
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、埼京線、東武東上線、
東海道新幹線、東海道本線、湘南新宿ライン。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、田無、戸塚、品川、
名古屋、刈谷。
移動の楽しみは食事と甘いもの、たまに観光
【高尾山登山】
登山や街ブラが好きで年に何回か出かけます。登山は楽しいですが登山口までたどり着くまで時間がかかるのが難点です。東京の八王子市に標高599mの高尾山があります。低山ですがとても人気のある山です。理由の一つは登山口まで新宿から電車で1時間ちょっとで着けることです。最寄り駅は京王線の高尾山口で改札から登山口まで10分もかかりません。登山ルートがたくさんあり道も整備されています。そんな高尾山はアクセスが良く自然が豊かで登りやすいのでとても人気があります。登山客数は年間300万人に上り、世界一といわれています。私は登山口から徒歩で登りますがケーブルカーやリフトを使えばスニーカーで十分可能です。
今回は現在「虎の巻伝授!算定もれ発見伝」という記事を雑誌「医事業務」に掲載中ですが、発行元の産労総合研究所編集部の方と一緒に登りました。きれいな富士山を見ることができ、新しい掲載企画のアイディアも出て有意義な1日となりました。8月には11回目となる富士登山を計画しています。
指摘3選
1.バセドウ病は救急医療管理加算の対象になりませんか?
他院からの紹介で緊急入院された患者さんで傷病名はバセドウ病と周期性四肢麻痺があります。
救急医療管理加算が算定されていませんが算定できないでしょうか。
該当する項目がないと考え算定しませんでした。
食事も入院後から開始されていたので。
救急医療管理加算の算定において食事管理は重要だといつも指摘していますが、
そうでない場合もあります。バセドウ病と周期性四肢麻痺から低カリウム状態ではないかと思います。L-アスパラギン酸カリウムの点滴をしているのでカリウム値を確認してください。
カルテに「K3.5mEq/L ↓」とあります。
低カリウム状態ですね。ネットで調べたらカリウムの正常値は3.6~4.8mEq/Lでした。
四肢麻痺もあるので(カ)重篤な代謝障害か(シ)その他の重篤な状態に該当すると思います。
深夜受診から重篤な状態ではないでしょうか。
医師と相談します。救急医療管理加算の算定は重要なので
これからも傷病名や検査結果から判断します。
疾患の症状を知ることが重要なので時間を見つけて少しずつ勉強しましょう。
甲状腺機能亢進症の代表的な自己免疫疾患で次の症状がある
メルセブルグの三徴候
・甲状腺腫大 - びまん性甲状腺腫
・眼球突出 - 甲状腺関連眼症 他に眼瞼後退や複視
・頻脈
その他
・動悸・多汗・体重減少・疲労感・手の震え・息切れ・イライラ感
原因 甲状腺ホルモンの過剰産生
合併症
・甲状腺クリーゼ - 内服中断や外傷、感染症により起こる多臓器不全状態
・甲状腺中毒性四肢麻痺 - 暴飲暴食、激しい運動後のカリウム低下による
診断 甲状腺ホルモン(FT3、FT4)上昇、甲状腺刺激ホルモン(TSH)低下
甲状腺シンチ、超音波検査、心電図
治療 薬物療法、アイソトープ治療、甲状腺摘出術
バセドウ病、周期性四肢麻痺があるときのDPC分類
ICD バセドウ病 E05.0 低カリウム血性周期性四肢麻痺 G72.3
甲状腺中毒性四肢麻痺 E05.9†、G82.5☆
治療によりコーディングを決定する 入院15日で比較(旧点数/新点数)
旧点数 新点数
・E05.0 → 100140 33,875点 34,614点
・G72.3 → 010140 36,484点 35,176点
・G82.5 → 010310 32,929点 32,870点
2.血ガス結果で算定できる点数 全身麻酔困難患者
算定できます。
SPO2はよく聞きますがPao2はあまり聞かないのでわかりませんでした
SPO2はサチュレーションやSATと呼ばれたりしてカルテや看護記録に記載されることが多いですね。会話で聞くこともあるので知っている医事課職員は多いと思います。
一方Pao2には触れる機会が少ないのでピンとこないですよね。
でも重要な項目なのでこの機会に勉強しましょう。
血液ガス分析 略語:BGA(blood gas analysis)
通常動脈血で行うが、患者さんの状態により動脈血採取ができないときは静脈血で行う。
呼吸状態が悪い場合や術前検査として行われることがある。
血液ガス分析項目 |
基準値 |
動脈血酸素分圧(PaO2) |
80~100㎜Hg(Torr) |
動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2) |
35~45㎜Hg(Torr) |
水素イオン指数(PH) |
7.35~7.45 |
塩基過剰(BE) |
-2~+ |
動脈血酸素飽和度(SaO2) |
95~98% |
この結果動脈血酸素分圧60㎜Hg未満又は動脈血酸素分圧・吸入気酸素分画比300未満の場合は(ケ)呼吸不全に該当し全身麻酔困難患者の点数を算定できる。
(参考)術前にD2001肺気量分画測定、D2002フローボリュームカーブを実施することが多い。
これは全身麻酔前に換気障害の有無を確認するもので、フローボリュームカーブの結果
1秒率が70%未満でかつ肺気量分画の結果肺活量比が70%未満の場合は(コ)喚起障害
に該当し全身麻酔困難患者の点数を算定できる。
3. DPC 仙骨部褥瘡・ステージⅣ テイコプラニン注投与 → 仙骨骨髄炎
仙骨骨髄炎の診断がありますので骨髄炎の治療が最多資源にならないでしょうか。
出来高レセの縦計は注射料が多いですね。
重度褥瘡処置を連日実施しているので褥瘡にコーディングしました。
確かに注射料が高いです。
傷病名から判断するとテイコプラニンの投与は骨髄炎の治療に思えますね。
カルテはどうなってますか。
診療開始日は仙骨部褥瘡が先にあり仙骨骨髄炎は入院後に診断されたものです。
骨突出がありそれから骨髄炎になったと記載されていました。
MRIで診断したようです。
骨髄炎の原因に深度褥瘡があるので骨突出→褥瘡増悪→骨髄炎発症でしょうね。
テイコプラニンとMRIも骨髄炎の医療資源なので仙骨骨髄炎にコーディング可能だと思います。医師と相談してください。
そうします。入院期間が20日で仙骨部褥瘡・重度褥瘡処置080250②が47,1445点
仙骨骨髄炎・テイコプラニン070330②58,480点なのでずいぶん点数が上がりました。
褥瘡の治療やコーディングは幅広いですね。
そうですね。褥瘡治療の基本は除圧と褥瘡処置ですがステージが進むと骨髄炎や腐骨になることもあり、抗生剤投与や腐骨摘出も必要になります。治療に応じコーディングを考えてください。
看護記録に「スラフ」と記載がありますがどういう意味ですか。
褥瘡が悪化すると壊死組織ができ黒いのがエスカー(黒色壊死組織)、
黄色のどろどろしたものをスラフ(黄色壊死組織)といいます。
DESIGN-RではUの深度判定不能に分類されます。
壊死組織を取り除くため外科処置を行いますが次の算定が考えられます。
・創傷処理筋肉に達する+デブリードマン加算
・デブリードマン ・植皮術 ・皮弁形成術 ・皮膚移植術
ありがとうございました
時間を作り早見表を読み込みましょう。処置料、手術料が重要ですが、今回は200床未満の生活習慣病(高血圧症、糖尿病、脂質異常症)に特定疾患治療管理料が算定できなくなり、生活習慣病管理料Ⅱに移行を検討していると思います。関連して外来管理加算、特定疾患処方管理1(廃止)が算定できないので入力が煩雑になると思います。それに関する記事が近々医学通信社「保険診療」に掲載されますので購読医療機関はご参照ください。
引き続き新規精度点検の御依頼をお待ちしています。特に首都圏の医療機関は大歓迎です。
次回は7月上旬です。
#35