12月の巡礼が終わりました。点検は11病院で移動距離はかなり長くなりました。新潟の医療機関にお邪魔した日は、寒波の襲来により短時間にまとまった雪が降ったようで、在来線が不通となりました。降雪は50cm以上あったと思います。久しぶりに大雪を経験しました。
ホームページの「お問い合わせ」から初めて連絡をいただいた医療機関のレセプト点検が実現しました。2日間で300件のレセプトを点検し、終了後は現場の皆様とカルテを点検したり、講評を兼ねたミニ勉強会を行うことができ楽しい2日間でした。レセプトだけでわからないことも、一緒にカルテを点検すると多くのことに気が付きます。ミニ勉強会に同席した方々から質問があり、算定に対する意欲も伝わってきて大いに盛り上がりました。ありがとうございました。
私一人の会社なのでその時の流れでいろいろ対応できます。レセプトだけでなく、カルテ監査、施設基準点検など柔軟に対応しています。ご興味のある医療機関さんはぜひお問合せください。
レセプト件数 1,429件
点検時間 70時間
移動距離合計 2,773㎞
移動時間合計 33時間
訪問した医療機関
1都4県 11病院 11日間
*東京都、埼玉県、神奈川県、兵庫県、新潟県。
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武拝島線、西武多摩湖線、西武有楽町線、副都心線、東武東上線、
埼京線、大江戸線、東横線、横浜線、東海道新幹線、東海道本線、山陽新幹線、上越新幹線、
神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、阪神本線、神戸高速線。
その他業務
*DPCコーディング講習会2時間、出来高算定講習会2時間。
1.A206在宅患者緊急入院診療加算についての指摘
仙骨部感染性褥瘡のため12月3日に緊急入院した患者さんです。
救急医療管理加算コメントに「クリニック医師から連絡」と記載があります。
A206在宅患者緊急入院診療加算が算定できないでしょうか?
診療録と看護記録アナムネを確認したところ、
自宅で褥瘡処置をしていました。
この場合算定できますか。
傷病名から考えてクリニックがC109在宅寝たきり患者処置指導管理料を
算定している患者さんなら算定できます。
地域連携室か医療相談室に頼んで確認してもらってはどうですか。
地域連携室に確認したところ、すでに主治医からの指示で
入院翌日にクリニックに連絡し、在宅寝たきり患者処置指導管理料を算定している
患者さんだとわかっていました。
FAXで褥瘡の程度や治療の注意点などの診療情報の提供も受けていました。
それなら在宅患者緊急入院診療加算3が算定できますよ。
わかりました。入院初日に1,000点ですね。
どうすれば算定もれを防ぐことができるでしょうか。
診療情報提供書を持参しているときは内容から算定要件を判断できますが、
診療情報提供書がない時は、診察した医師やアナムネをとった看護職員から
連絡してもらう体制を作るといいですね。
どんな患者さんに算定できるのでしょうか。
施設基準の届け出は必要ですか?
加算の2と3は届出の必要はありません。
算定できるのは、入院した月か前月に診療所やクリニックで次の算定をしている場合です。
・C002在宅時医学総合管理料
・C002-2施設入居時等医学総合管理料
・C003在宅がん医療総合診療料
・C100~C120の在宅療養指導管理料(C101在宅自己注射指導管理料以外)
直接紹介された時だけでなく、今回のように入院後に患者さんの情報を問い合わせたときも
算定できます。
把握するのが少し難しいような…
他部署の協力が不可欠ですね。
医事課は診療報酬項目を院内に伝達する役割があると思っています。
医師、看護師、地域連携室、医療相談室に「在宅患者緊急入院診療加算」
という項目があることを伝えることが重要です。
そうすることで情報が入り算定につながるのではないでしょうか。
院内ネットワークですね。他部署と協力し算定できる症例を見逃さないようにします。
在宅患者緊急入院診療加算2(2,000点)を算定する方法を教えてください。
在宅療養を行っている入院設備のないクリニックは、患者さんが急変したときなどに
受け入れてくれる病院と連携したいと考えているはずです。
緊急時の受入医療機関の名前を書いた文書をあらかじめ患者さんや家族に発行してもらい、
その患者さんを受け入れた時に2,000点が算定できます。
発行する書式を医療機関が作成し、クリニックに提供するのもいいかもしれません。
患者さんや家族の方も緊急時に受診する医療機関がわかっていれば安心ですね。
当院は紹介患者さんが多いので算定できる症例があると思います。
病診連携を強化し算定件数を増やしたいと思います。地域医療への貢献ですね。
在宅患者緊急入院診療加算 算定チャート レセプトさとう合同会社作成 ①診療所の診療情報提供書持参で在宅から入院 ②在宅から緊急入院した場合 *一度算定した診療所に、在宅療養を実施している場合や新たに始める場合、患者や家族に対し、 |
2.肺血栓塞栓症予防管理料についての指摘
肺動脈血栓塞栓症で入院した患者さんですね。
肺血栓塞栓症予防管理料が算定できないでしょうか。
機械や材料の使用を確認してください。
フットポンプを使用していました。
すでに血栓塞栓症を起こした患者さんですが算定できますか。
ウロキナーゼを投与し治療を開始していますが、繰り返し発症する可能性があり、
その予防を目的に管理をしていると思うので算定できます。
手術をしていないので算定できないと思いました。
手術をしていなくても肺血栓塞栓症発症のリスクが高い場合に算定できます。
フットポンプや弾性ストッキングなど材料を用いるのが要件です。
リスクが高くなるのはどんな時ですか。
飛行機に乗って長時間同じ姿勢でいると「エコノミー症候群」になることがあります。
それと同じようにベッド上安静の期間が長期になると血栓ができやすくなるので、
重症者、手術後の患者、精神病棟で治療の必要から身体拘束を行う場合などが該当します。
入院時や手術前にPTやFDPなど凝固系の検査をすると思いますが、
異常値の場合、凝固能亢進により血栓ができるリスクが高くなります。
医師はリスク要因や検査結果を見ながら実施を決定していると思います。
材料を装着すればいいんですね。
いいえ、それだけでは算定できないんです。
管理料なので実施理由や発症リスクを診療録に記載する必要があります。
以前、個別指導で「記載がないので管理をしていることにならない」と指摘され
返還金が生じた医療機関がありました。
*術後に肺血栓塞栓症予防管理料を算定するときは下表を参考にしてください。中リスク以上の手術で算定できます。低リスク手術の時は、リスク要因をコメントで記載してください。循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2002-2003年度合同研究班報告)より転載しました。他に「日本血栓止血学会」などの予防ガイドラインがあります。
各種手術における静脈血栓塞栓症のリスクの階層化(年齢因子を含む) *リスクを高める因子=凝固異常症、静脈血栓塞栓症の既往、悪性疾患、癌化学療法、重症感染症、 <循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2002-2003年度合同研究班報告)より> |
3.DPCコーディングの副傷病についての指摘
DPCコーディング
症候性てんかん 010230xx99x00x 入院21日 70歳
コーディングデータを見ると入院日からタゾピペ4瓶を点滴しています。
また、酸素吸入を5ℓから開始し8ℓに変更されています。
血液ガス分析を2回実施し入院後発症病名に「急性呼吸不全」とあるので、
肺炎はないでしょうか。誤嚥性肺炎なら副傷病ありになります。
カルテを確認したら誤嚥性肺炎の所見と治療方針が問題リストに記載されていました。
「副傷病あり」 010230xx99x01x に変更しました。
そうですか。入院21日なので44,307点が53,481点に増点できましたね。
はい、よかったです。
抗生剤投与を見逃すのがいけないのですね。
対策はありますか?
定義副傷病で多いのは「040080肺炎等」「040081誤嚥性肺炎」
「110310腎臓又は尿路の感染症」「040190胸水・胸膜の疾患その他」です。
胸水・胸膜の疾患以外は共に抗生剤で治療しますよね。だから手術をしていないときに抗生剤の投与があれば、感染症が発症したと考えることができます。
最終的に樹形図の分岐が「定義副傷病なし・あり」にたどり着いたときは、
定義副傷病があるかもしれないと考え点滴の薬剤を確認するといいのではないでしょうか。
私が点検するときはそうしています。
なるほど!心がけます。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回をお楽しみに。