2023年12月レセプト巡礼 【指摘3選】①大腿骨頚部骨折・緊急整復固定加算 ②輸血料1回目、2回目 ③DPC インフルエンザそれとも肺炎? 

レセプト巡礼

  

能登半島地震で被災された多くの方々に心よりお見舞い申し上げます 
 また亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げます。自然災害はどこで起こるかわからないからこそ、災害後の物心にわたる支援が必要になります。自衛隊や多くの都道府県の支援部隊が現地に入って活動しているニュースもありました。初期対応が重要だと思うので国をあげた継続した支援が必要です。私も2011年東日本大震災を被災していているので、あの時の体験は忘れることができません。PTSDから精神科受診を余儀なくされ12年過ぎた今日も不眠症の治療が続いています。
 2004年に発生した新潟中越地震の震災直後に多くの発症が報告された「たこつぼ心筋症」が注目されました。原因は被災や長い避難所生活のストレスとの分析でした。東日本大震災直後にも多くの発症があったとのことです。避難所生活が長引くと感染症にも注意が必要です。外来で投薬を続けていた患者さんの症状が悪化することがあるかもしれません。医療機関の機能が麻痺している状況下で医療の継続が難しくなっていることと思われます。DMATチームや移動薬局車が現地入りしているようなので全国の医療従事者が活動を見守っていると思います。よろしくお願いします。人工透析患者さんの搬送などもニュースで報じられていました。個人的に直接支援することはできませんが、義援金の募集が始まったので協力させていただきました。  
 羽田空港の事故も痛ましいものです。海上保安庁の航空機で殉職された隊員の方のご冥福をお祈り申し上げます。一方JAL乗務員の的確な避難誘導で、乗員乗客合わせて379名が無事に避難できたことは乗員の日ごろの避難訓練の成果と乗客の協力が相まって奇跡的と評価されています。医療機関や介護施設は参考にすべき点が多々あると思います。

一年の計は元旦にあり
 2024年・令和6年になりました。年が変わった時は声に出して3回くらい言わないと年号がすっと出てきません。今年は診療報酬改定だけでなく6年に一度の医療・介護・障害福祉サービスのトリプル改定となります。関係者は頑張りどころです。さらに従来4月1日から新点数に変更になっていましたが、今回は6月1日です。短冊は今まで通り3月初旬に出るようなので請求担当者やベンダーさんの改定準備は少し楽になるかもしれません。毎回改定前に取得した施設基準は特例があるので、届出を検討しているところは改定前に届出するのが得策です。


2023年12月実績報告  
 
レセプト点検件数   2,929件 
延点検時間      35時間 
移動距離合計     2,117㎞  
移動時間合計     26時間

レセプト点検に訪問した医療機関 
 1都3県 9病院 9日間 
 *東京都2病院、埼玉県4病院、兵庫県2病院、愛知県1病院。

その他の業務
 *出来高算定講習会、DPCコーディング講習会 各1回

乗車した路線
 *西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄副都心線、埼京線、東武東上線、
  東海道新幹線、東海道本線、神戸地下鉄西神山手線、神戸地下鉄海岸線、ポートライナー、
  JR神戸線、東京モノレール、大江戸線。

乗降駅、乗換駅
 *練馬、所沢、小平、一橋病院前、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、田無、品川、
  名古屋、刈谷、新神戸、神戸、兵庫、西神中央、ハーバーランド、三宮、三ノ宮、市民広場、
  医療センター、神戸空港駅、神戸空港、羽田空港、羽田空港第1ターミナル、浜松町、大門。

おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの) 
【ホテル朝食バイキング】
 ホテルの朝食はバイキングが多いですね。レセプトさとう合同会社を始める前はホテルに宿泊することがあまりありませんでしたが、現在は遠方の出張が多いので月に最低1泊、多い時は6泊くらいあります。おすすめ朝食№3は次の通りです。機会があれば皆様もぜひ。
1.神戸ホテルジュラク(最寄り駅:地下鉄ハーバーランド、JR神戸) 
 会場の広さと種類の豊富さがポイントです。特に兵庫県産の温野菜がおすすめで、中でも淡路島産の
 玉ねぎが美味しいです。
2.ポートピアホテル(最寄り駅:ポートライナー市民広場) 
 朝食会場は30階で料理はもちろん素晴らしい景色を見ながらの食事が最高です。おすすめはフレンチ
 トースト。
3.ホテル東洋イン(最寄り駅:JR刈谷駅) 
 大浴場があり朝食付きで曜日に係わらず安く設定されています。朝食は手作り感がありコンパクトに
 まとまっています。おすすめは朝カレー(ない時もあります)
  
 
   

指摘3選

1.骨折した時間はわかりますか?

佐藤
佐藤
 

12月4日に右大腿骨頚部骨折で緊急入院し、翌日に骨折観血的手術を実施した患者さんです。
受傷時間の記載はありますか。

医事課
医事課

12月4日の14時に救急搬送されました。介護施設で転倒したようです。
介護サマリがあるのでそれによると12時40分に転倒したようです。
経過観察していたところ右大腿部の腫脹疼痛が増悪し、自制困難のため
施設長の判断で消防署に依頼したようです。

佐藤
佐藤
 

レセプトをみると手術・麻酔時間が12月6日の9時~11時と記載があるので、転倒した4日の
9時40分を骨折時間とすると、約44時間20分後に手術を開始したことになります。終了時間を含めても緊急整復固定加算4,000点を算定要件である骨折後48時間以内の手術に該当しているので算定できませんか。

医事課
医事課
 

時間は満たしていますね

佐藤
佐藤

他の施設基準を一緒に確認しましょう。(医学通信社診療点数早見表から一部抜粋)
1 整形外科、内科、麻酔科の標榜はありますか
2 整形外科を5年以上経験している医師が2名以上いますか
3 麻酔科標榜医が配置されていますか
4 常勤の内科医が1名以上配置されていますか

5 緊急手術が可能な体制にありますか

6 大腿骨近位部骨折に対するK046骨折観血的手術とK081人工骨頭挿入術の
   前年の算定件数は60回以上ですか

7 大腿骨近位部骨折後48時間以内に実施した前年の実績を院内掲示していますか

8 二次性骨折予防継続管理料Ⅰの届出はありますか

医事課
医事課
 

すべて満たしています。前年に48時間以内の手術件数はメインの掲示板に掲示があります。

今年8月から適時調査に備え総務部と施設基準点検を実施しているので把握しています。

佐藤
佐藤

では算定をお願いします。4,000点は大きいですから。今回は介護サマリがあったので受傷時間がわかりましたが、患者さんや家族からの聞き取りでもわかる場合があるのでカルテなどに記載してもらうといいですね。

医事課
医事課
 

はっきりわからないときはどうすればいいのでしょうか。

佐藤
佐藤
 

判断の参考としてA205-2超急性期脳卒中加算があります。これは脳卒中発症後4.5時間以内にアルテプラーゼを投与したときに算定できますが、アルテプラーゼ適正治療指針第3版に発症時間が不明の時は「最終健常確認時刻をもって発症時刻」とするとあります。朝寝室で倒れていたのを発見したときなどを想定しています。
骨折の場合は転倒などで疼痛が出現した時と考えることもできますが、診察した医師の判断によると思います。

 
 
 
医事課
医事課

ありがとうございました。

2.前回輸血はいつですか?

佐藤
佐藤
11月10日に鉄欠乏性貧血で緊急入院した患者さんです。
輸血を行い輸血料が2回目の点数になっていますが、前回輸血はいつですか。
 
 
 
 
 
医事課
医事課
輸血履歴を確認します。前回も鉄欠乏性貧血で9月20日に入院し
9月21日から3日間MAP輸血をしています。
佐藤
佐藤
9月に入院し退院したのですね。
それでは今回は1回目で算定できるでしょうね。
 
 
 
医事課
医事課
すでに1回目があるので2回目の算定と理解していましたが。
佐藤
佐藤
輸血は赤血球や血小板が不足し貧血や出血が続くときに、血球成分を補充し症状を改善させることが目的です。通常血球が増えれば症状は改善します。
症状が軽快すれば今回の輸血療法は終了と考えることができます。
 
医事課
医事課
新たに輸血を必要となる症状が出現した時は、
前回の輸血療法と別と考えればいいのですね。
佐藤
佐藤
 
白血病や再生不良性貧血などで定期的に輸血を継続するときは2回目になるでしょうが、そうでない場合は1回目になることが多いと考えています。
貧血でMAP輸血を行うときは3日くらいでヘモグロビン濃度が上昇するのではないでしょうか。もちろん症状によりますが。
 
 
 
医事課
医事課

輸血料1回目で算定できると理解しました。
今後は前回輸血後の改善状況から判断します。

 

 

3. DPC インフルエンザ肺炎に抗生剤長期投与

佐藤
佐藤
                                         
 
インフルエンザ肺炎で緊急入院した70歳の患者さんで
040070ウイルス性肺炎にコーディングしています。
コーディングデータを見ると入院初日から抗生剤を1日2回点滴しています。
インフルエンザ菌による細菌性肺炎ではないでしょうか。
 
 
 
医事課
医事課

入院契機病名がインフルエンザ肺炎なので040070にしました。

佐藤
佐藤
 

インフルエンザはウイルス感染なので抗生剤でなくラピアクタなどの抗ウイルス剤を投与するはずです。喀痰培養で感受性が1菌種出ていますが、インフルエンザ菌ではないですか。

医事課
医事課
 

Haemophlus influenzaeが出ているようです。

佐藤
佐藤
 

インフルエンザ菌のことですね。インフルエンザにり患し重度化すると免疫低下から易感染状態になり、細菌感染しやすくなるので肺炎に移行することがあります。肺炎球菌感染から発症する場合もあります。医事課の判断として抗生剤の投与がある場合は医師に確認するといいですね。この事例の傷病名はインフルエンザ菌肺炎(J14)ですね。
私が点検するときにインフルエンザ肺炎のレセプトは真っ先にコーディングデータの抗生剤の有無を確認します。

 

 
医事課
医事課

わかりました。医師に確認します。抗生剤投与を見逃してはダメですね。
この事例は20日間の入院なので36,153点が45,131点になりました。

佐藤
佐藤

入院期間から考えてもインフルエンザではないと想像できます。

次回は1月下旬を予定しています。いつも予定は未定になっています。
インフルエンザの季節です。うがい手洗いを徹底し栄養と睡眠で春を待ちましょう。
私の日課は朝の検温とスロースクワットです。