2022年3月のレセプト巡礼 【指摘3選】 救急医療管理加算、TUR-P圧迫止血用カテーテル、DPC(原発性肺癌)副傷病あり            

レセプト巡礼

2020年診療報酬改定
 令和4年3月4日、保発0304第1号「令和4年度診療報酬改定について」が告示されました。4月1日から新しい診療報酬が適用されます。経験から改定直後に気を付けることがいくつかありますので紹介します。
4月1日以降の入力は新点数で3月分の入力は旧点数。
 当たり前のことですが、4月10日のレセプト請求まで混乱する可能性があります。新点数と旧点数の
 入力画面を確認しましょう。診療点数早見表がない場合、新点数の理解や確認に時間がかかります。
稀に医事コンピューターや電子カルテの新点数マスターに誤りがある。
 点数の入れ替えはベンダーさんから送られた媒体で行うと思いますが、告示から短期間で作業を行う
 ためヒューマンエラーを生じる場合が稀にあります。審査機関や保険者からの過誤返戻で気づいたこ
 とがありました。
 【対策
  ・算定が多い項目の点数を目視で確認しましょう。初再診料、入院基本料の点検が重要です。
  ・化学療法薬など高額な薬剤の薬価を確認しましょう。
  ・その上でテストレセプトを印刷することをお勧めします。

新型コロナウイルス臨時的診療報酬の期間延長
 臨時的な取扱いについて(その68)が令和4年3月16日に通知されました。(その63)問1で3月31日まで算定ができるとされていた、院内トリアージ実施料の二類感染症患者入院診療加算(250 点)は7月31日まで算定可能と期間が延長されるという内容です。詳細は通知を確認してください。

救急医療管理加算対象拡大
 急性期病院や診療所にとって、とても重要な加算です。点数が高いことはもちろんですが、救急医療管理加算の算定が「重症度、医療看護・必要度Ⅱに係る評価票、(8)緊急に入院を必要とする状態(5日間)」に該当するため、さらに重要な算定項目になりました。

救急医療管理加算1となる患者
 ア 吐血、喀血又は重篤な脱水で全身状態不良の状態
 イ 意識障害又は昏睡
 ウ 呼吸不全又は心不全で重篤な状態
 エ 急性薬物中毒
 オ ショック
 カ 重篤な代謝障害(肝不全、腎不全、重症糖尿病等)
 キ 広範囲熱傷、顔面熱傷又は気道熱傷
 ク 外傷、破傷風等で重篤な状態
 ケ 緊急手術、緊急カテーテル治療・検査又はt-PA療法を必要とする状態
 コ 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態
 サ 蘇生術を必要とする重篤な状態
 シ その他の重症な状態
今回の改定で「コ 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態」と「サ 蘇生術を必要とする重篤な状態」が追加されました。全く新たな概念でなく旧点数の一部から独立したと考えることができます。

例えば旧点数で絞扼性イレウスの場合、入院時にイレウス用ロングチューブを挿入しても緊急手術ではないので、該当する項目がなかったかもしれません。「アの脱水」で算定することもあったでしょう。新点数では「コ 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態」に該当するのではないでしょうか。絞扼性イレウスは治療が遅れると絞扼部腸管の血行障害が進行し、腸壊死になる可能性がある重症疾患です。    

下表の状態は救急医療管理加算「コ」と「サ」に該当するのではないかと思います。もちろん全身虚脱、チアノーゼなど他の要因も重要です。

傷病名治療救急医療管理加算   
S状結腸捻転J034-3内視鏡的結腸軸捻転解除術
急性胃潰瘍胃ファイバースコピー、ファモチジン点滴  
モビッツⅡ型房室ブロック  対外ペーシング
陳旧性心筋梗塞・心停止カウンターショック
救急医療管理加算 「コ 消化器疾患で緊急処置を必要とする重篤な状態」 「サ 蘇生術を必要とする重篤な状態」

改定から3か月くらい、医療機関も審査機関も新点数を理解するまで算定に疑義が生じます。医療機関として算定できると判断した時は、積極的に算定することが重要です。

2022年4月施行の改正個人情報保護法
 4月1日に施行されます。診療情報管理部門が作成している診療録開示規定などの変更が必要になる場合があるます。確認しましょう。

 
2022年3月実績報告

レセプト点検件数   1,275件 
延点検時間     73.0時間 
移動距離合計     3,285㎞  
移動時間合計    42.0時間

レセプト点検に訪問した医療機関 
 1都5県 11病院 10日間
 *東京都2病院、埼玉県2病院、神奈川県2病院、兵庫県3病院、新潟県1病院、茨城県1病院。

その他の業務
 *DPCコーディング講習会2時間、出来高算定講習会2時間。

乗車した路線
 *西武池袋線、西武新宿線、西武拝島線、西武多摩湖線、西武有楽町線、副都心線、東武東上線、
  埼京線、大江戸線、東横線、横浜線、東海道新幹線、山陽新幹線、山手線、上越新幹線、常磐線、
  ほくほく線、神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、ポートライナー線。

乗降駅、乗換駅
 *練馬、所沢、小平、一橋学園、戸塚、戸田公園、小竹向原、志木、菊名、鴨居、田無、中井、
  池袋、品川、上野、石岡、越後湯沢、六日町、新神戸、三宮、三宮・花時計前、御崎公園、
  阪神三宮、高速長田、長田、みなとじま、医療センター。

おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの) 
 *神戸プリン(新神戸ホーム自販機)
  神戸の高級プリン。なめらかで甘み控えめ。神戸土産の定番ということです。
 *さかえやの天ぷら
  三宮駅から直結しているさんちかの「味ののれん街」にある和食のお店で、てんぷらや天丼が
  美味しいです。  

1.救急医療管理加算の指摘  350点 → 950点 食事がポイント

佐藤
佐藤

潰瘍性大腸炎で入院した患者さんですね。

救急医療管理加算2 350点を算定していますが、

実日数7日間すべて禁食です。

救急医療管理加算1の950点に該当しないでしょうか?

カルテ記載でバイタルサインなど確認してください。

医事課
医事課

体温が38.5℃で水様便(+)と記載されていました。

佐藤
佐藤

口内炎の記載はありますか。

医事課
医事課

アフタ性口内炎の診断があります。

佐藤
佐藤

7日間禁食、水様便、アフタ性口内炎があることから

重症と判断できるので救急医療管理加算1に該当しそうですね。

医事課
医事課

1と2はどうやって判断すればいいですか。

いつも迷います。

佐藤
佐藤

難しいですねよ。「緊急に入院を必要とする重症患者に算定できる」

と書いてあるだけなので。

医事課
医事課
重症患者がポイントですね。
佐藤
佐藤

重症度を判断するときの指標にバイタルサインがあります。

 
 
 
 
医事課
医事課
バイタルですね。体温と脈拍とあとは…
何でしたっけ?
 
佐藤
佐藤
血圧と呼吸数です。意識障害を加えることもあります。
救急医療管理加算の算定で重要なのの一つが食事管理だと考えています。
入院直後から食事が開始されたときは重症と言い難いですね。
それから全身虚脱状態もポイントです。
 
 
 
医事課
医事課
私も風邪の時は食欲がなくなるときがあります。
佐藤
佐藤
入院時の食事の指示が重要ですね。
禁食以外の指示に「N・P・O」があります。
医事課
医事課
「N・P・O」は聞いたことありません。
佐藤
佐藤

nothing per osの略で、絶飲食という意味です。

禁食より厳しい食事管理なので、カルテに記載があれば

重症の証明になります。

医事課
医事課

参考にして救急医療管理加算を算定します。

今回は医師と相談の上、950点に変更します。

2.圧迫止血用バルンカテーテルの算定誤りの指摘  前立腺手術TUR-P

佐藤
佐藤

前立腺肥大症で経尿道的前立腺手術(TUR-P)を実施した患者さんです。

手術材料で039膀胱留置用カテーテル2管一般(Ⅰ)@233を算定していますが、

圧迫止血用カテーテルの使用がないでしょうか?

医事課
医事課

手術記録と手術室看護師に確認したら

圧迫止血用カテーテルを使っていました。

変更します。

佐藤
佐藤

圧迫止血用カテーテルは4,610円と高いのでだいぶ違いますね。

オーダリングの誤りか請求担当者のうっかりミスなのか検証し、

正しい請求を心掛けてください。

医事課
医事課

わかりました。

圧迫止血用カテーテルについて教えてください。

佐藤
佐藤

TUR-Pは尿道内から肥大した前立腺を削る手術なので出血します。

通常止血するときは手で圧迫するのが基本ですが、

尿道内にはできないので、圧迫止血用カテーテルを留置し、

カテーテルの先に2㎏くらいの重りを付けて牽引します。

そうすることでカテーテルと手術部が密着するので止血できます。

 

医事課
医事課

そういう仕組みなのでね。

治療の流れを知っていれば誤算定を防げたかもしれません。

治療法の学習も医事課に必要だと実感します。

佐藤
佐藤

算定項目を知ることは当然必要ですが、

治療の流れを知ることで正しい算定ができるようになるので、

勉強会を実施するといいのではないでしょうか。

医事課
医事課

わかりました。次回勉強会で取り上げます。

3.DPCコーディングの指摘 定義副傷病 抗生剤に注目

佐藤
佐藤

原発性肺癌で緊急入院した患者さんです。

抗生剤入り点滴を実施しています。肺炎はないでしょうか。

 

 

医事課
医事課

医師に確認したところ、肺癌による閉塞性肺炎ということでした。

佐藤
佐藤

ということはICDは「C34.9†、J17.8*」の二重分類で、

J17.8を選択し「040080肺炎等」の副傷病ありですね。

 

医事課
医事課

二重分類は†と*どちらを選択してもよかったでしたね。

佐藤
佐藤

可能です。コーディングや副傷病選択誤りの多くは抗生剤投与を評価していないことです。

出来高算定なら抗生剤の適応症を考えますよね。それと同じです。

医事課
医事課
「副傷病なしを見たらありと思え」佐藤さんの格言がありました。
佐藤
佐藤

その格言を頭に入れておくと樹形図選択誤りが減ると思います。

樹形図が一つ下に行くと点数が上がるものがほとんどです。

医事課
医事課

気を付けます。


最後までお読みいただきありがとうございました。
では、次回をお楽しみに。