レセプト点検で知る2020年診療報酬改定内容
診療報酬改定の都度、新設された項目や削除されたものがありますが、今回は説明会を聞いていないのでわからないものが多いだろうと思っていました。そんな状況でもレセプト点検は待ってくれないので、実際に点検しながらレセプトや診療点数早見表やDPC点数早見表から算定項目を知ります。
改定の年は変更点にいかにして早く気が付くかが勝負です。早いもので改定から2か月経過し、少しずつ頭に入ってきましたが、今後もレセプト点検を重ね、知識の引き出しを増やそうと思っています。皆様も頑張って新点数を把握してください。
5月の巡礼は、施設基準フォローアップセミナー講師があったり、訪問した病院が増えたりとやりがいがありました。6月はさらにタフな予定になっています。久しぶりに空路、北海道を訪問します。北海道のレセプト点検はとても楽しみですが、飛行機に乗るのが3年ぶりくらいなので、チケットの受け取り方をイメージトレーニングしています。
改定新項目1
B001-3-12外来腫瘍化学療法診療料
従来あった注射料の通則6「外来化学療法加算1及び2、抗悪性腫瘍剤を注射した場合」が移行した項目です。項目名は施設基準フォローアップセミナーで、現場の皆様から寄せられた質問に回答しましたので当然知っていましたが、レセプトで始めて算定事例がありました。
この項目は医学管理料で、従来の化学療法は注射料なので併算定は可能ではないかと漠然と考えていました。実際レセプトの印字を見ると「調べよう」を思うので診療点数早見表を熟読したところ明記されていました。転用します。【「通則6」の「外来化学療法加算」における「抗悪性腫瘍剤を注射した場合」の点数 (中略) が廃止された。それに代わり、B001-3-12外来腫瘍化学療法診療料が新設された】。レセプト点検から知り得た知識です。
算定はB001-3-12外来腫瘍化学療法診療料を13番で、注射手技料と薬剤を30番で算定します。前立腺癌や乳癌の「ゾラデックス」、多発性骨髄腫の「ベルケイド」は化学療法でレジメンが存在します。専用室で観察しながら実施すれば算定要件を満たすと思いますので検討してはいかがでしょうか。
改定新項目2 DPC
100202その他の副腎皮質機能低下症(アジソン病、副腎クリーゼなど)と160580腹壁損傷(腰背部打撲傷、殿部皮膚欠損創など)の定義副傷病に心不全が追加されました。アジソン病の症状に脱力感や疲労感があるので、心不全を併せ持つ患者さんがいるかもしれません。
2022年5月実績報告
レセプト点検件数 1,117 件
延点検時間 54時間
移動距離合計 2,054㎞
移動時間合計 40時間
レセプト点検に訪問した医療機関
1都4県 9病院 8日間
*東京都2病院、埼玉県3病院、神奈川県1病院、茨城県1病院、兵庫県2病院。
その他の業務
*施設基準管理士協会 施設基準フォローアップセミナー講師
*レセプト請求講習会講師 2回
乗車した路線
*西武池袋線、西武新宿線、西武バス、西武有楽町線、地下鉄有楽町線、地下鉄副都心線、
都営大江戸線、東武東上線、埼京線、湘南新宿ライン、東横線、横浜線、山手線、国際興業バス、
東海道新幹線、山陽新幹線、上野東京ライン(常磐線)、神戸市営地下鉄西神・山手線、
神戸市営地下鉄海岸線。
乗降駅、乗換駅
*練馬、所沢、小平、一橋病院前、池袋、戸田公園、小竹向原、志木、朝霞台、宿、南与野、戸塚、
菊名、鴨居、中井、田無、池袋、品川、新神戸、三宮、三宮・花時計前、永田町、上野、石岡、
御崎公園、西神中央。
おすすめの食べ物(移動の楽しみは食事と甘いもの)
*キットカットリトル
コンビニで売っている赤い袋のあれです。レセプト点検の休憩時や移動の時にいいですね。
難を言えば量が少ないのですぐなくなることでしょうか。
1.精密持続点滴注射加算 いつ算定していますか?
急性腹膜炎から敗血症に移行した患者さんですね。
ドパミン塩酸塩キットを投与し、精密持続点滴注射加算の算定があります。
はい、収縮期血圧が90以下になり輸液ポンプを用いて
ドパミン塩酸塩を点滴していました。
実日数が4日で精密持続点滴注射加算の算定は3日間です。
3日で終了したのですか?点滴注射は4日間算定していますね。
4日目に循環器病院に転院しました。
輸液ポンプはいつまで使用していたのでしょうか。
輸液ポンプを付けたまま転院したようです。
そうするとドパミン塩酸塩は転院の時まで注入されていたので、
その日も精密持続点滴注射加算が算定できます。
最後に注射薬を交換したのが転院前日なので、
交換日しか算定できないと思っていましたが…
注入している間は算定していいんですよ。
そうなんですね。薬剤の交換日のみ算定していました。
精密持続点滴注射加算の算定要件は、
特定の注射薬を1時間に30ml以下の速度で滴下した時です。
滴下速度の指示はどうなっていますか。
8ml/hとカルテに記載があります。
200ml1袋の注射なので200÷8にすると25になりますね。
つまり25時間で薬剤が空になるということです。空になる前に追加します。
初日は10時に開始したとすると2日目の11時頃に追加。3日目は12時頃に追加。
4日目は13時頃に追加することになりますが、転院は何時ですか。
午前10時です。
薬剤が残っていたので交換しないで転院したんですね。
ドパミン塩酸塩を注入しながら転院したので算定できることになります。
輸液ポンプを外した日まで算定できることが多いので確認しましょう。
早速医事課内に情報伝達します。
精密持続点滴注射加算の算定の一例 ドパミン塩酸塩200ml 5ml/h(パーアワー)の指示。
1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 | 6日 | 7日 |
9時開始 | 1時更新 | 17時更新 | 9時更新 | |||
80点 | 80点 | 80点 | 80点 | 80点 | 80点 | 80点 |
*L003硬膜外麻酔剤における局所麻酔剤の持続的注入80点も考え方は同じです。
2.C101在宅自己注射指導管理料 針加算を忘れずに
薬剤はヒューマログ注ミリオペンです。針加算を算定できないでしょうか。
注入器加算と針加算は算定できないと思っていました。
注入器加算は算定できませんが、院内で針を渡していれば算定できますよ。
薬剤と針を院内から渡していました。
それなら算定できますね。
インスリン製剤で注入器加算と針加算が算定するときの注意点はありますか。
薬価基準早見表に「注入器加算は算定できない」などと記載されているものがありますよ。
今度確認します。
公益社団法人日本糖尿病協会がわかりやすい一覧表を出しています。
早速確認し、算定もれ防止につなげます。
3.DPCコーディング 脱水症の原因と結果もコーディング候補
患者80歳 入院契機:脱水症 入院時併存症:老年期認知症
治療:ビーフリード輸液500ml3キット
ビーフリードの点滴が7日連続投与されています。
脱水の原因は何でしょうか。
高齢のため食事が食べられず緊急入院しました。
カルテには「食事摂取量低下による脱水」と記載されています。
Albはどれくらいですか。
3.0と低値です。
補液の内容をみると脱水の治療より栄養管理に重点を置いているように思います。
実日数が10日で食事の提供が18食、3日間くらい禁食だったのですね。
看護経過表を見ると全量摂取はできないようです。
ビーフリードの効能に「経口摂取不十分の 軽度の低栄養状態」というのがあります。
電解質異常にも効果がありますが、医師がビーフリードを選択したということは
低栄養だったのでしょうね。
そうすると医療資源は低栄養と考えればいいでしょうか。
点数を比較すると、脱水症は22,996点、低栄養は23,162点です。
補液の内容と脱水症の原因から、
コーディングは100330xxxxx00x栄養障害でいいと思います。
ちなみに食事摂取量低下の原因に老年性認知症が関与していれば、
01021xxxxx0xxx認知症もあり得ます。点数は23,022点です。
救急医療管理加算が(ア)の脱水なので、
コーディングを脱水にしているかもしれません。
原因や結果も考慮の上コーディングを決定します。
予定より遅い配信になりました。お待ちいただいた方はお待たせいたしました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
では、次回をお楽しみに。7月末日を予定しています。